研究課題/領域番号 |
16K06829
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
中川 敬三 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 准教授 (60423555)
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研究分担者 |
松山 秀人 神戸大学, 工学研究科, 教授 (50181798)
吉岡 朋久 神戸大学, 科学技術イノベーション研究科, 教授 (50284162)
佐伯 大輔 神戸大学, 工学研究科, 特命助教 (70633832)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ナノシート / 無機膜 / ナノろ過膜 / ファウリング / 金属酸化物ナノシート / ニオブ酸ナノシート |
研究実績の概要 |
アモルファスシリカやチタニア膜,また精密な細孔構造を有するゼオライト膜などに代表される多孔性無機膜は,一般に耐熱性や耐薬品性,機械的強度に優れており,逆浸透法による脱塩や浸透気化法による有機水溶液の脱水など水処理に向けた様々な研究が精力的に進められている.本研究では,高い透水性能と分離性能,さらに優れたファウリング耐性を併せ持つ機能性無機膜の開発を目指し,二次元ナノシートを利用したナノシート積層膜の開発を行う.本年度の研究では,高分子多孔膜上へのニオブ酸ナノシート積層膜の作製と透水性能の評価を行った. 1.簡易な吸引ろ過法を利用し,高分子支持膜上に数十nmの膜厚さを有するナノシート積層膜を作製した.支持膜の表面処理,またナノシート間における有機バインダーの効果により,水中において高い安定性を有する積層膜の作製に成功した. 2.クロスフロー型透水試験装置により,膜性能の評価を行った.透水性能や分離性能は,積層膜の膜厚さや吸引ろ過操作の減圧乾燥時間によって大きく変化した.ポリエチレングリコールを利用した阻止性評価により,分画分子量4.3kDaの分離性能を有することがわかった.また各種アニオン性有機色素では90%以上,Na2SO4で約80%の高い阻止率を示し,ナノろ過膜として機能することがわかった. 3.得られた透水性能や分離性能は同様な方法で作製した酸化グラフェン積層膜よりも高いことがわかった.ニオブ酸ナノシートは負に帯電した二次元結晶構造を有しているため,膜荷電と各アニオン種間の静電相互作用により高い阻止率が得られたと考えられる.また構造評価の結果より,従来とは異なる透水メカニズムが考えられ,それにより高い透水性能が得られたものと考えられる. 以上より,簡易な吸引ろ過法により作製したニオブ酸ナノシート積層膜は,水中で安定かつ高い膜性能を有することが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は多孔質膜上にナノオーダーの膜厚さを有するナノシート積層膜の作製と透水性能の評価を行った.簡便な吸引ろ過法を利用し,様々な支持膜の検討,膜厚さの制御を行った.ナノシート間の相互作用を強めることによって,水中での高い構造安定性が得られ,また透水試験において高い透水性能と優れた溶質の分離性能が得られた.これら膜性能については,ナノシート積層膜として近年注目されている酸化グラフェン膜よりも高いことがわかった.このように当初の目的は十分達成されており,また分離性能の評価など2年目の実施計画も一部すでに進められていることから,おおむね順調に進展していると判断できる.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では簡易な吸引ろ過法により,これまでほとんど報告例のないニオブ酸ナノシート積層膜の作製に成功した.しかしながら,現状のナノシート積層膜には,さらなる透水性の向上,また新たな種類のナノシート積層膜の検討が求められている.平成29年度では,ナノシート積層膜の多孔構造形成に伴う透水性の向上や新規ナノシート種での検討を加え,それらの膜性能やファウリング耐性を中心に検討を進める.
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