研究課題/領域番号 |
16K06830
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
久保田 富生子 九州大学, 工学研究院, 助教 (60294899)
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研究分担者 |
後藤 雅宏 九州大学, 工学研究院, 教授 (10211921)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抽出 / 抽出剤 / 分離回収 / レアメタル / 希土類 / 貴金属 / 吸着 / イオン交換 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで難しかった金属間の分離を可能にするイオン交換型の新しい分離媒体の開発を行い、利用が進んでいない資源からのレアメタルの分離回収を可能にすることである。この様な資源として、現在探索が進んでいる海底資源や、製錬残渣、使用済み製品などがあげられる。 本年度は、希土類金属および貴金属、特に白金族金属(PGMs)を取り上げ、それらの資源の金属組成を検討して、その問題点を検討し、その解決策を検討した。 希土類金属の中でもスカンジウムはさまざまな鉱石に微量含まれ、副産物として複雑な工程で回収されているため高価である。製錬残渣を原料とする場合、希土類やその他の遷移金属との分離が重要であるが、様々な工業抽出剤を試した結果、リン酸系抽出剤はスカンジウムとの結合力が強く、抽出後の処理が難しいこと、またその他の抽出剤では、分離性、抽出や抽出能力に難点があるなどの問題点があった。そこで、リン酸系抽出剤を中心に、抽出能力の異なる他の抽出剤を加えることにより、穏やかな条件で抽出および逆抽出が可能となることを明らかにした。協同効果(拮抗効果)によって錯体の形成能力をコントロールすることに成功した。 貴金属、特に白金族金属(PGMs)は、さまざまな資源からの分離が課題である。これらの金属間の分離は難しく、またこれも抽出(分離)後の処理が難しい金属群である。生体分子との親和性を利用した新規抽出剤を合成し、使用済み製品浸出液からの分離回収を検討した。その結果、前者では、この抽出剤により、貴金属の大量の遷移金属からの分離ならびに相互分離に成功した。本抽出剤の物理化学的特性を調べ、実用化が可能であることを示した。以上の結果から分子設計の指針を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の計画の通り、製錬廃液や使用済み製品などの未利用資源からのレアメタルの分離回収の問題点を明らかにし、それを可能にする方法を見いだすことができた。希土類金属の中でもスカンジウムをモデルとして、従来の抽出剤を複数用いて、その協同(拮抗)効果を利用し、抽出分離性能をコントロールできることを示した。また貴金属を対象にその相互分離および大量の不純物金属からの分離を可能にする抽出剤および抽出系を開発することができた。これらの抽出系はいずれも工業化が可能であることも明らかにしている。次年度の計画のために、必要な基礎データが得られている。
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今後の研究の推進方策 |
未利用資源の金属組成を詳細に検討し、今年度得られた基礎データをもとに、引き続き抽出剤や抽出システムの開発および最適化を行う。また抽出剤として、イオン液体系の抽出剤が貴金属に白金族金属に対し有効であることがあることが明らかになったことから、本年度は新たにイオン液体抽出剤を候補に加える予定である。 これらの抽出剤およびシステムを高分子材料に固定化することによって、固液抽出へと展開する。固定化する高分子材料ならびに固定化方法を検討し、優れた分離剤として調製する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、人件費が発生しなかった。また合成材料等も既存のものである程度賄うことが可能であり、工業用抽出剤は提供を受けることができた。またその他の分析も企業による協力を得ることができた。次年度は、新たにイオン液体を導入すること、分離剤調製のための高分子材料が必要になる。また評価の分析のためのアルゴンガス使用料の増加が見込まれる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額の使途は、概ね 試薬・ガラス器具等物品費(900,000円)、分析機器使用料(200,000円)、アルゴンガス使用料(500, 000円), 国際会議費用(国際溶媒抽出学会200,000円)である。
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