前年度までに、二種類の工業用抽出剤の拮抗効果を利用する、あるいは一分子中に二種官能基を含む新規開発のアミド酸型の抽出剤を用いることによりこれまで難しかったScの分離回収を可能にした。前者は、従来抽出剤のScへの高過ぎる親和性を適度に緩和し、抽出したScを抽出相から剥離し易くすることにより選択的回収を可能するものである。本年度は、混合抽出剤におけるSc抽出緩和のメカニズムを明らかにし、これをさらに吸着剤として調整した。本混合抽出剤は液液抽出、分離膜および固液抽出(吸着)システムに導入することが可能で、いずれの場合も鉱石製錬残液から高選択的にScを回収可能であることを示した。一方、アミド酸型の新規抽出剤も、Scに対し抽出剤混合系と同様の優れた効果を示した。逆抽出が可能であることから、液液抽出を発展させたScの膜分離への応用が可能となった。分子の基本骨格に、異なる側鎖を導入可能であり、これによって本抽出剤の高度分離への展開が可能となった。 本アミド酸型抽出剤は、抽出条件により陽イオン交換型あるいは陰イオン交換型の抽出剤となり、後者の場合には金・白金族金属の抽出分離が可能であるが、さらに白金族金属(PGMs)の分離に対しては、ホスホニウム型イオン液体が有用であることを示した。このイオン液体を抽出溶媒として、PdとRhを含むスクラップの酸浸出液からのPGMsの分離回収を検討した。その結果、抽出、逆抽出などの各工程における操作条件を調整することにより、多量の遷移金属を含む原料溶液の中から、PdとRhをそれぞれ高選択的に回収可能であることを明らかにした。 以上、イオン交換能を有する新規抽出剤あるいはイオン液体抽出系は、これまで困難であったレアメタルの分離を容易にし、未利用資源からのこれら金属回収への応用が可能であることを示した。
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