平成29年度までの研究成果により、MFI型ゼオライトコーティング膜の調製が可能となった。調製した膜を用いて、ジメチルホルムアミド(DMF)中のポリエチレングリコール(PEG)のナノろ過について研究を行ったところ、排除性能が低い結果であった。これらを踏まえ、平成30年度では以下の項目について研究を行った。 (1)DMF中でのPEGの形態確認:水中およびDMF中でのPEGの形態を研究した結果、PEGは水およびDMF中で存在形態が異なり、水中では凝集体として存在しているのに対し、DMF中では孤立分散していることが示された。従って、DMF中のナノろ過のモデル対象物質としてはPEGは不適切であることが明らかとなった。以降は、サイズの変化がないと考えられる金ナノ粒子を用いて検討を行った。 (2)DMF中での金ナノ粒子のナノろ過:調製したMFI型ゼオライトコーティング膜により、DMF中の金ナノ粒子(5nm)を阻止率90%以上で分離することが可能であった。ナノろ過の操作条件の影響を検討した結果、特に膜面線速度の低下に伴い、阻止率が低下することが示された。これは、膜面上に金ナノ粒子が堆積し、濃度分極が生じたためと考えられる。得られた基礎データから、濃度分極モデルに従って解析を行った結果、膜の調製法により、濃度分極の程度に差が生じることが示された。これらは今後さらに精緻に検討する必要がある。 (3)長時間運転に対する安定性:調製したMFI型ゼオライトコーティング膜により、DMF中の金ナノ粒子(5nm)のナノろ過の長時間運転に対する安定性を検討した。膜は12日程度は安定して高い阻止率を得ながら操作することが可能であったが、12日以降は阻止率の若干の低下が見られた。これは、膜面上に金ナノ粒子が堆積したためであると考えられる。従って、適切なタイミングでの膜の逆洗浄が必要であることが示された。
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