研究課題/領域番号 |
16K06836
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
並木 則和 工学院大学, 先進工学部, 教授 (40262555)
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研究分担者 |
諏訪 好英 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (10416836)
鍵 直樹 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (20345383)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波霧化 / 光触媒分解 / 液滴含有酸化チタン / 帯電霧化液滴 / 静電捕集 |
研究実績の概要 |
担当Ⅰ(並木)では,旋回流式給気口を備えた小型霧化槽(内径φ100)からなる前処理(PD)部の上部に,霧化液滴の負極シフト用電極(電圧印加用マルチリング電極とドーナツ型対向接地電極)を設置して帯電量分布を測定した。その結果,従来の単極リング電極からなるシフト用電極と比べて,一個帯電粒子径50nmに相当する電気移動度径で空間負電荷生成密度が約1.4倍増加した。さらに,PD部の最上部に遠心分離部を挿入し,静電捕集(EC)部を組み合わせた一体型装置で粒子捕集性能を評価したところ,従来の装置と比べて顕著な性能向上は見られなかった。 次に,担当Ⅱ(並木・鍵)では,光触媒霧化槽からの生成液滴の粒径分布を測定し,さらに試験VOCとしてトルエンを光触媒霧化槽内に導入し,紫外線照射下でのトルエンの分解率が最大となる操作条件(懸濁液濃度や流量,温度等)を調べた。その結果,分解率が最大となる酸化チタン懸濁液濃度C_TiO2は1.5 g/Lであった。さらに,液滴径分布ではDI水のみの液滴のピーク径50nmに対して,懸濁液の場合の分布は200 nmをピーク粒径とする分布となり,C_TiO2を増加させてもピーク粒径は変わらずに個数濃度が単調に増加した。 担当Ⅲ(諏訪)では,超音波霧化により生成する気柱を傾斜した円柱として霧化槽内の気流速度分布と粒子の軌跡計算を行った。その結果,主液滴である3μm前後の液滴は旋回流式給気口により生じる旋回流では十分な遠心効果が得られず,ほとんどの粒子の気流との相対速度はほぼ0であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
霧化液滴を用いた粒子捕集の実験では,小型の霧化槽に戻し旋回流式給気口を設置したことで,霧化液滴の負極シフト用電極による液滴の帯電量分布の負極シフトが改善したが,一体型装置の粒子捕集性能の向上には寄与しなかったことから,根本的に装置の構造を見直す必要がある。一方,霧化液滴含有酸化チタンによる光触媒分解の実験では,本光触媒反応槽の最適な操作条件を見つけることができた。次に,霧化槽内の液滴の挙動解析では,現在の霧化槽内の条件では3μm前後の主液滴は超微粒子の捕集に寄与していないことが示唆され,その点からも粒子捕集装置の改良が必要であることが明らかになった。 以上のことから,いくつかの問題点はあるものの計画に沿った検討を着実に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
過去2年間の成果踏まえて,最終年度では担当Ⅰでは霧化液滴による微粒子捕集のための霧化槽の改良を行う。具体的には,PD部内の遠心分離部を取り外して従来の単純な構造に変えた上で,負極シフト用電極を本来の誘導荷電が行えるように気柱近傍に設置して,さらなる帯電量分布の負極シフトを試みる。 次に,担当Ⅱでは光触媒霧化槽単体の分解率の向上を目指すために,酸化チタン懸濁液に添加剤を加える,あるいは酸化チタンから可視光応答型光触媒に変更する等を検討する。さらに,反応器下流に排出された酸化チタン粒子を捕集し,捕集した粒子にさらに紫外線照射する装置を設置して分解率の向上を試みる。 次に,担当Ⅲの挙動解析担当では霧化槽の気流速度分布が流量によって複雑に変化する点や,数μm前後の液滴が捕集に寄与しないと言った知見から,液柱から発生する数十μmの粗大液滴によるUFP捕集に関する簡易モデルを構築して,液柱近傍の固定点から発生する粗大液滴の軌跡計算を行うことで数値解析の計算負荷を軽減する。 以上の各担当の実験および数値解析の結果を総合して,UFP除去およびVOC分解を一体化した装置を想定した場合の最適な装置の構造や運転条件を提案して本研究の全体の総括を行う。
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