研究課題/領域番号 |
16K06839
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
澤田 真一 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (70414571)
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研究分担者 |
前川 康成 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 部長(定常) (30354939)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 逆電気透析発電 / カチオン交換膜 / アニオン交換膜 / 放射線グラフト重合 / 膜抵抗 |
研究実績の概要 |
本年度は、まず放射線グラフト重合法によって低抵抗のカチオン交換膜(Cation Exchange Membrane, CEM)とアニオン交換膜(Anion Exchange Membrane, AEM)を作製した。次いで、これらの膜を用いて逆電気透析発電試験を実施した。 CEMの作製は、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体へのガンマ線照射(10 kGy)、スチレンのグラフト重合(48 h)、スチレンユニットのスルホン化、という手順で行った。AEMの作製は、同様にETFEへのガンマ線照射(10 kGy)、クロロメチルスチレン(CMS)のグラフト重合(64 h)、CMSユニットの四級化、という手順で行った。得られたCEMのイオン交換容量は2.4 mmol/gであり、膜抵抗は現行CEMの10分の1の0.27 Ω cm2だった。一方AEMのイオン交換容量は1.6 mmol/gであり、膜抵抗は現行AEMの6分の1の0.40 Ωcm2だった。 作製したCEMとAEMを5枚ずつ逆電気透析発電スタック(電極:Ag|AgCl、有効膜面積:22 cm2、膜間の距離:0.5 mm)に装着した。0.5および4.3×10-3 mol/LのNaCl水溶液をそれぞれモデル海水・淡水として供給した。スタックに接続された負荷の抵抗値を変えることで、電流密度と電圧の関係を調べた。 スタック電圧は電流密度0 A/m2のとき約0.95 Vであった。電流密度が上がるとともにスタック電圧は単調に低下した。放射線グラフトCEM・AEMを用いた試験では、最大発電出力は0.39 W/m2であった。これは、現行CEM・AEMを用いた試験の1.3倍に相当する高い性能である。低抵抗のCEM・AEMを用いることで発電出力が向上することを実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画どおりに発電試験を実施でき、研究は順調に進んでいる。本研究の途中で、さらに発電出力を向上させるアイデアを発想し、これを実行するために研究期間を1年間延長するに至った。
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今後の研究の推進方策 |
さらに膜厚が薄く、かつイオン交換容量の高いCEMとAEMを作製し、逆電気透析発電を実施したい。また、淡水層に挿入するイオン伝導性スペーサーを放射線グラフト法で作製し、これを用いた発電試験を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
逆電気透析発電の出力をさらに向上させるため、研究期間を1年間延長することになったため、次年度使用額が生じた。試薬やガラス器具などの物品の購入、学会参加のための旅費などに充てる計画である。
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