研究実績の概要 |
エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)膜へのガンマ線照射後、スチレンのグラフト重合とスルホン化でカチオン交換膜(Cation Exchange Membrane, CEM)、クロロメチルスチレンのグラフト重合と四級化でアニオン交換膜(Anion Exchange Membrane, AEM)を作製した。CEM、AEMともにイオン交換容量(Ion Exchange Capacity, IEC)が上がると膜抵抗は低下する傾向を示した。 逆電気透析発電試験には、IEC=2.4 mmol/gの放射線グラフトCEMとIEC=1.6 mmol/gの放射線グラフトAEMを用いた。前者の抵抗は0.27 Ωcm2(市販CEMの10分の1)であり、後者の抵抗は0.39Ωcm2(市販AEMの6分の1)だった。これらCEMとAEMを5枚ずつ発電試験スタック(電極:Ag|AgCl、有効膜面積:22 cm2、膜間の距離:300 μm)に装着した。0.5 mol/Lの食塩水をモデル海水、4.3×10-3~9.3×10-2 mol/Lの食塩水をモデル淡水として供給した。スタックに接続された負荷の抵抗値を変えることで、電流密度とセル電圧の関係を調べた。 電流密度とセル電圧の積から出力密度を求めた。出力密度は電流密度に対して凸型のカーブを描き、その極大値を最大出力密度と定義した。最大出力密度はモデル淡水の食塩濃度に依存し、食塩濃度が2.3×10-2 mol/Lのとき、最も高い0.63 W/m2に達した。これは市販のCEMとAEMを用いた場合と比較して1.3倍に相当する高い出力である。本研究により、放射線グラフトCEMとAEMは逆電気透析発電への優れた適用性を示すことが明らかになった。
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