研究課題/領域番号 |
16K06851
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
岩井 利之 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究主任 (20416291)
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研究分担者 |
伊藤 貴敏 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究室長 (60416295)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | マイクロリアクター / フロー合成 / フラーレン / メタノフラーレン / 有機薄膜太陽電池 / ヒドラゾン / 硫黄イリド |
研究実績の概要 |
平成29年度は、ナトリウムランプを用いた、[5,6]PCBMから[6,6]PCBMへの光異性化反応の検討を行った。これまでにも他の光源を用いて、単離した[5,6]PCBMから[6,6]PCBMへの光異性化反応について検証したことはあったが、水系二層系ヒドラゾン法のフロー合成化を進める上では、より実際の反応系に即した状態を再現するべきであると判断し、光非照射下におけるフラーレンとヒドラゾンの反応液を用いて、ナトリウムランプによる光異性化検討を行った。送液速度を変更することにより、光異性化反応に要する時間を検証し、異性化反応に必要な時間を算出することができた。この検討結果をもとに、フラーレンとヒドラゾンの反応(加熱条件)から、光異性化反応までのフロー合成の検討を進めることとした。 次に2台の送液ポンプとサンプルインジェクターを用いた送液実験系を構築し、ナトリウムランプによる光異性化ユニットと接続することにより、水系二層系ヒドラゾン法のフロー合成化検討を進めることとした。フラーレンとヒドラゾンの反応(加熱条件)および、光異性化反応共に、リアクター容量を固定し送液速度の変更による反応効率の検証を行った。リアクター容量を固定していたため、加熱条件反応部の滞留時間不足によるフラーレン転換率が低いこと、また、低送液速度でしか反応を実行することができなかった点が課題ではあるが、フラーレンとヒドラゾンから[6,6]PCBMを直接合成するフロー合成系を構築することに成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度、水系二層系ヒドラゾン法のフロー合成化を、購入した送液ポンプを用いて検討を進めていた。しかし、2台のポンプによる送液時に、双方の送液量に差が出ていることが判明し、その原因究明を行う必要が生じた。送液ポンプだけでなく、マイクロリアクターに使用している各部品(ミキサー、配管など)についても変形や閉塞が生じていないか検証することとなり、結果的にはミキサーの部分的な閉塞によるものと判断できたが、想定していたよりも検証に時間を要してしまい、当初予定していたところまでの研究遂行に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
フラーレンとヒドラゾンから[6,6]PCBMを直接合成するフロー合成系を構築することには成功したものの、フラーレンの転換率の向上が課題であり、リアクター容量の増大及び送液速度向上による改善を試み、連続送液実験による大量合成法の検討へと進めたい。また、条件検討項目(送液速度、リアクター容量、反応温度、滞留時間など)が多岐にわたることから、実験計画法の導入による反応条件最適化についても検討することを考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 本年度の研究を遂行する中での情報収集過程で、フロー合成に使用可能な液-液セパレータ(有機溶剤と水溶液を送液しながら分離する装置)があることが分かった。現在当該装置の仕様については調査中であるが、価格が数十万円するとの情報を得ており、次年度の実験消耗品購入や学会発表費用に差し支えが出ないよう次年度に繰り起す必要があると判断した。 (使用計画) 当該装置を利用することで現在進めている水系二層系のフロー合成反応において、光異性化反応の前後で反応系から水溶液を取り除くことが可能になり、光異性化反応における水溶液の効果の検証を行うことができる。当該装置の詳細な仕様を確認したうえで購入の是非については判断する。その他の実験消耗品や旅費等はおおむね当初の計画に基づいて支出する予定である。
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