研究実績の概要 |
本申請研究では,アニオン交換性層状無機水酸化物,特に層状複塩基性塩(HDS)および層状希土類水酸化物(LRH)のアニオン交換能を駆使し,様々なアニオン性遷移金属錯体を導入した新規不均一系触媒を設計することを目的としている. 当該年度では,(1) Ni(II)-Zn(II)で構成されるHDS, NiZn, 層間内へ[CuCl4]2-を導入した触媒の設計,および(2)酢酸アニオン導入型Y(III), Gd(III), Yb(III)で構成されるLRH触媒を設計した.以下,概要を述べる. (1) K2CuCl4水溶液を用いてアニオン交換反応により合成したNiZn層間内に単核[CuCl4]2-錯体を導入した[CuCl4]2-/NiZn触媒を用いると,ベンジルアルコールとアセトニトリルとの酸化的カップリング反応が効率良く進行し,対応するbeta-ケトニトリルが高収率で得られることを見出した. 効率的な反応には,酸素分子およびKOHの存在が不可欠であることを見出した.詳細に反応パスを検討したところ,塩基によるアルドール縮合は進行せず,アルコールの酸化的脱水素反応とシアノメチル化反応が逐次的にワンポットで進行していることを見出した.(2)上述の3種の希土類元素で構成される硝酸アニオン導入型LRH触媒, NO3-/R-LRH (R=Y, Gd, Yb),を合成し,アニオン交換により酢酸アニオンを導入した3種の触媒を合成した.これらAcO-/R-LRH触媒は,水溶媒中で特異的に膨潤することがわかった.放射光を用いた時分解X線回折実験から,水による膨潤は極めて速く起こり,瞬時に層間隔が拡大していることがわかった.得られた触媒は,ブロンステッド塩基性とルイス酸性が協奏的に機能していると考えられる.
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