研究課題/領域番号 |
16K06858
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
石田 玉青 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 特任教授 (90444942)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金ナノ粒子 / ビニル基交換反応 / ソフトルイス酸 / 金クラスター |
研究実績の概要 |
これまでに金ナノ粒子触媒を用いた炭素-水素結合のアリール化反応において、担体酸化物との界面に存在するカチオン性の金原子が、芳香族求電子置換反応型での反応点になっていることが示唆されていた。金の更なる触媒活性の向上には、カチオン性金原子の安定化、ソフトルイス酸性の増大が必要であることから、これまで均一系Au(I)錯体触媒で報告されている、ビニル基交換反応をモデル反応として、どのような担体で金のソフトルイス酸性を向上させられるのかを検討した。安息香酸と酢酸ビニルとの反応により安息香酸ビニルを合成する反応を用いて、種々の酸化物担持金触媒のスクリーニングを行った結果、酸性、塩基性酸化物に担持した金触媒では活性が低く、酸化ジルコニウム(ZrO2)などの両性酸化物に金を担持した場合に最も触媒活性が高くなることが分かった。一方で、酸化セリウム(CeO2)が担体の場合にはカチオン性の金が安定に存在できることから、CeO2-ZrO2複合酸化物に担持した金触媒を調製した。Au/CeO2-ZrO2について、乾燥のみ、空気焼成したもの、水素還元したもので比較したところ、乾燥のみでAu(III)が最も多く含まれる触媒において最も活性が低く、水素還元してAu(0)のみを含む触媒において最も高い活性が得られた。この結果より、Au(0)でもソフトルイス酸性を示すだけでなく、不均一系触媒においては、Au(0)の方がソフトルイス酸触媒として高い触媒活性を示すことが分かった。また、金粒子サイズを変化させた場合、より小さいサイズのAu(0)粒子の方が高い触媒活性を示したことから、小さくなるほど担体との界面に存在する金原子の割合が増加するためにサイズの減少とともに触媒活性が向上したと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ソフトルイス酸触媒として機能する金触媒の設計指針が得られた。金ナノ粒子・金クラスター中のカチオン性金原子が関与する反応は、本ビニル基交換反応以外にも、芳香族求電子置換反応型で進行する炭素-水素結合の官能基化や二重結合の異性化反応、ヒドロアミノ化反応などがあるので、本結果を利用して、種々の有機反応において、触媒活性の向上が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られたソフトルイス酸金触媒の設計指針を用い、カチオン性金原子が関与する他の有機反応へと展開を広げる。また、金粒子サイズの更なる微小化に取り組む。 ハイドロキシアパタイト(HAP)やいくつかの金属酸化物に担持した金触媒では、従来金では見られないとされていたStrong Metal-Support Interaction(SMSI)が見られることが分かっており、SMSIによりHAPで一部表面を覆われた金ナノ粒子では界面に存在する金原子がよりカチオン性を帯びることが報告されていることから、SMSIを利用したソフトルイス酸として機能する不均一系金クラスター触媒を検討する。
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