研究課題/領域番号 |
16K06859
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
奥村 和 工学院大学, 先進工学部, 教授 (30294341)
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研究分担者 |
飯田 肇 工学院大学, 先進工学部, 講師 (60327723)
石井 晃 鳥取大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (70183001)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 酸化タングステン / フリーデル・クラフツアシル化反応 |
研究実績の概要 |
これまでの研究により、Nb-W酸化物触媒はカルボン酸をアシル化剤とした芳香族のアシル化反応に活性を示すことを見出している。しかし、Nbの役割については十分に分かっていなかった。2016年度では水熱合成法によってさまざまな組成のNb-W酸化物触媒を調製し、Nb濃度が構造・酸性質・触媒活性に与える影響を検討した。その結果、約1%という微量のNbの添加によってNb-W酸化物の構造は大きく変化し、ファイバー状のNb含有ヘキサゴナル酸化タングステン結晶が生成するこを見出した。微量のNbの添加によって、著しく物性が変化することから、Nbは水熱合成におけるファイバー状結晶の生成に影響を与えているものと推察される。このファーバー状の結晶は、オクタン酸をアシル化剤としたアニソールのアシル化反応に高い活性を示した。カルボン酸をアシル化剤としたフリーデル・クラフツ反応は副生成物が水のみであるため環境負荷が小さいため、Nb-W酸化物触媒が高い活性を示したことは重要な知見である。しかし、Nbをさらに添加するとファイバー結晶がさらに微細化し、表面積や酸量が増大するにもかかわらず、活性が低下した。現在のところ、この理由は分かっていないが、Nb濃度が増大することで酸点の種類が変化するものと推測している。一方で、Nb/(Nb+W)比が0.5を超えると酸量が5 mol kg-1に達することを見出した。この酸量は酸化物としては非常に大きい値であるので、Nb含有量の多いNb-W酸化物触媒は今後何らかの反応に適用できるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2016年度では1%という微量のNbの添加によってNb-W酸化物触媒の物性や触媒活性が大きく変化すること、およびNb/(Nb+W)比が0.5を超えると5 mol kg-1という非常に多くの酸点が発現することを見出しており、おおむね順調に進展している。また、微量のNbの添加によってフリーデル・クラフツアシル化反応の活性を高めることができ、研究の進展があったと言える。一方、酸量の非常に多いNb-W酸化物結晶には強い酸点が存在していることが分かっており、今後すぐれた触媒として使用できることが期待される。
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今後の研究の推進方策 |
酢酸をアシル化剤としたトルエンのアシル化反応を実施し、水熱合成法で調製したNb-W酸化物結晶の可能性を追求する予定である。活性が十分に発現しない場合には、アンモニウムイオンを銀やスズイオンに交換し、ルイス酸性を高めた触媒を調製し、反応を実施する。また、Nb含有量の多い試料の酸量は非常に大きいことから、この試料が適用できる反応を見出すことを目的とする。一方で酸点のキャラクタリゼーションに関する知見が十分には得られていないことから、今後は赤外吸収スペクトルや昇温脱離法などのさまざまな手法によってキャラクタリゼーションを推進する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ケミストプラザcp-1000が予定よりも安価に購入できたこと、およびXAFS測定を比較的近距離にある高エネルギー加速器研究機構でおこない、旅費を抑制できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
触媒反応を実施するための試薬、ガラス器具、ガスの購入に充てる予定である。
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