研究課題/領域番号 |
16K06861
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研究機関 | 神戸市立工業高等専門学校 |
研究代表者 |
久貝 潤一郎 神戸市立工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (80617134)
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研究分担者 |
中川 貴 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (70273589)
清野 智史 大阪大学, 工学研究科, 准教授 (90432517)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | ナノ粒子 / 触媒 / 液相還元法 / アルコール酸化 / 燃料電池 |
研究実績の概要 |
炭素担持Pt-Cu、Pt-Ru、Ptナノ粒子をアルコール還元法で合成する際に添加するカルボキシレートの分子構造を変えてナノ粒子の構造と形状を調べ、ナノ粒子保護メカニズムを探った。20~30 wt%程度の実用的な金属担持量であっても炭素鎖の長いセバシン酸ナトリウムを保護剤に用いると1 nm 程度のPt-Cu粒子を炭素上に高分散に担持できた。X線回折ピークは認められず、CuのXAFSは酸化銅のそれに近かったが、エネルギー分散型X線分析を併用した電顕ではPtとCuの分布がほぼ一致していることから、Cuは合金に近い状態でPtの近傍にあることが示唆された。一方、PtやPt-Ru系粒子の合成にはカルボキシレート系の保護剤の効果は小さかったが、ホスフィン酸ナトリウムを保護剤に用いると炭素上に分散担持することができた。Pt-Cuの場合には数個の粒子からなる凝集体が担体上に分散した構造となり、ホスフィン酸濃度が高いほどCuのPtへの固溶が進んだ。これらの結果から、カルボキシレートが立体効果により粒子成長を抑制するのに対し、ホスフィン酸塩はPtイオンの還元を抑制する効果もあることが示唆された。炭素担体の影響も調べた。比表面積が低くても、揮発分が多い、即ち表面官能基が多いSunblack X15上には凝集体が認められずPt-Cu粒子が炭素表面に密に分散担持された。ホスフィン酸塩を用いて合成したPt-Cu触媒は2-プロパノール酸化活性に優れ、中間体に対するPt-Cu合金の被毒抑制効果と触媒に残留したリンの酸化促進効果によるものと考えられた。この他、含浸法で炭素担持Pd触媒を調製しPd源の影響を調べた。含浸法でも金属源のカウンターアニオンは触媒構造と活性に大きな影響を与えることがわかった。硝酸塩よりも酢酸塩を用いた方が粒子サイズが小さく、より広い電位範囲にわたりギ酸酸化活性を示すことがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
カルボキシレートとホスフィン酸塩を保護剤に用いて炭素担持Pt-Cu、Pt-Ru、Ptナノ粒子触媒を調製し、各保護剤の効果と各組成における粒子生成メカニズムを明らかにした。二種の保護剤を共存させて粒子合成を行い、Pt-Cu系、Pt-Ru系、Pt系のそれぞれに対する各保護剤の効果から、異種粒子が共存したヘテロ構造触媒の設計指針を得た。含浸法によりPd系触媒を調製し、含浸法においてもPd源のカウンターアニオンが粒子サイズと触媒特性に影響することを見出し、現在粒子サイズと触媒特性の関係の調査、液相合成の検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
液相法で保護剤を用いることにより、実用的な金属担持量のPt-Cu、Pt-Ru、Ptナノ粒子触媒を調製する事が可能となった。今後、保護剤を活用して異種ナノ粒子が共存するヘテロ構造触媒の調製に応用する。アルコールの酸化中間体と酸素の吸着バランスが異なる二種の粒子を互いに近接するよう配置し、低電位域での被毒の低減と酸化の促進を目指す。メタノール、2-プロパノールの他、バイオマスから得られるエタノールとエチレングリコールの酸化に触媒を適用する。PdとPt系粒子から成る触媒を用いてギ酸酸化特性の向上を図る。窒素を導入した炭素担体を用い、炭素担体の特性がPt系ナノ粒子の構造に与える影響、触媒活性(アルコール類の酸化特性、酸素還元特性)の関係を調べ、触媒性能の向上を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
回転電極を用いて酸素還元活性が測定できることを確認するための時間を要した。また、酸素還元反応での過酸化水素の生成を検出するためのバイポテンショスタットを購入する必要が生じた。
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