研究実績の概要 |
液相還元法を用いて炭素担持Pt系ナノ粒子を合成する際の保護剤の分子構造の効果を調べた。これまでにカルボン酸塩の炭素鎖が長いほどPt-Cu粒子が微細化することを見出してきた。今年度は更に、アクリル酸塩や安息香酸塩などの共鳴構造を含む保護剤を用いるとPtイオンが安定化しメタノール水溶液中で還元しないことがわかった。また、二価の芳香族カルボン酸塩(フタル酸塩)を用いると微細な結晶が得られ、保護剤の官能基の種類や数によって白金イオンの還元性と白金粒子の安定性を調節できることがわかった。 Pt単元系及びPt-Cu,Pt-Ru,Pt-Co,Pt-Niの各二元系ナノ粒子について、保護剤無添加の場合、長鎖カルボン酸ナトリウム、ホスフィン酸ナトリウム、それらの両方を添加して合成した場合のそれぞれの粒子構造と触媒特性を調べた。保護剤を添加して合成した触媒はいずれも保護剤無添加の条件で合成した触媒よりも微細な粒子が得られ、Pt-Ru二元系触媒を除き、ホスフィン酸ナトリウムを添加して合成した触媒が他の保護剤を用いて合成した触媒よりもメタノール酸化活性に優れる傾向が認められた。触媒に残留した保護剤成分が反応中間体の酸化を促進していると考えられた。 メタノール、2-プロパノール、ギ酸の酸化反応を回転電極装置で行ったところ、いずれの反応も電極の回転数が高くなるに従って電流が低下したことから、反応中間体が触媒表面から脱離して拡散することがわかった。ギ酸の酸化反応では、触媒表面から脱離しうる生成物は炭酸塩類と考えられ、炭酸塩類が触媒表面を被毒物から保護している可能性も示唆された。
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