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2017 年度 実施状況報告書

S-アデノシルメチオニン依存酵素を活用した有用物質生産プラットフォームの 開発

研究課題

研究課題/領域番号 16K06864
研究機関北海道大学

研究代表者

佐藤 康治  北海道大学, 大学院工学研究院, 助教 (30360928)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードS-アデノシルメチオニン / メチル基転移酵素 / 補酵素 / 葉酸 / 代謝工学
研究実績の概要

近年、合成生物学的手法を代謝工学へ応用することで、微生物により生産可能な化合物種が飛躍的に拡大されている。更なる拡張には、補酵素依存酵素の利活用は極めて重要であり、これを実現するには補酵素の供給系や再生系をもつプラットホーム開発が必須である。そこで本研究では、多様な化合物の合成に関与する補酵素S-アデノシルメチオニン (SAM) 依存酵素を活用するためのプラットホーム構築を目的とする。
本年度は、SAM依存メチル基転移酵素が副生成物であるS-アデノシルホモシステイン(SAH)によって阻害されることを考慮し、SAH分解系についてSAM合成系強化に先立ち検討した。SAH分解経路としては大腸菌がもつ5’-methylthioadenosine/SAH nucleosidase(Mtn)とS-ribosylhomocysteinase(LuxS)の利用を検討した。この評価は、大腸菌粗酵素液を用いたin vitro反応を行い、生成物をHPLC解析し行った。その結果、プラスミドでMtnおよびLuxS遺伝子を高発現させた場合に、SAH分解およびホモシステイン生成を確認した。
SAM依存メチル基転移酵素に関しては、ラットおよびMyxococcus xanthus由来カテコール-O-メチル基転移酵素(COMT、SafC)とヒト由来フェニルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素(PNMT)について検討した。in vitro解析より、COMTとSafCの活性は確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

SAM依存メチル基転移酵素には、ラットおよびMyxococcus xanthus由来カテコール-O-メチル基転移酵素 (COMT、SafC)とヒト由来フェニルエタノールアミン-N-メチル基転移酵素(PNMT)を用いた。これらの活性は、各遺伝子を導入した大腸菌粗酵素液を用いたin vitro反応を行い、生成物をHPLC解析し評価した。COMTおよびSafCは、プロトカテク酸およびドーパミンを基質とし評価した結果、予想される生成物が検出された。よって、何れも活性型として発現していることがわかった。一方、PNMTはノルアドレナリンを基質に反応を行ったが、予想される生成物は検出されなかった。ネガティブコントロールでもSAM分解が確認されたことから、SAM分解活性の方がPNMT活性よりも高くSAMが消費されたため反応生成物が検出されなかったと推察した。
SAM依存メチル基転移酵素は副生成物であるSAHによって阻害されることを考慮し、SAH分解系についてSAM合成系強化に先立ち検討した。大腸菌はMtnとLuxSによる分解経路をもつため、その利用を検討した。はじめにSAHを基質に大腸菌粗酵素液を用いたin vitro反応を行い、生成物をHPLC解析し評価した。しかしSAH分解は認められなかったため、Mtnの高発現を検討した。Mtn遺伝子をプラスミドで高発現させたところ、数分でSAHが消失されたことから、非常に高い活性を有することが確認された。この際、ホモシステインは検出されなかったため、次の反応を触媒するLuxSの高発現について検討した。Mtn-LuxSオペロンとして発現させたところ、ホモシステイン生成は検出されたが、MtnによるSAH消費速度よりも遥かに遅かった。

今後の研究の推進方策

SAH分解系として検討したMtn-LuxSではホモシステイン生成が確認された。よってSAM依存メチル基転移酵素と共に大腸菌で発現させ、本研究の目指すプラットホームに適しているか、最終産物の生産能を指標に評価する。もしホモシステイン生成速度が課題と判断された場合には、遺伝子発現の順序を変更したLuxS-Mtnオペロンや独立した発現系の構築等を試み、その影響を検討する。
上述以外のSAH分解系として、SAH hydrolase(SAHase)が知られており、反応生成物としてホモシステインとアデノシンを生成する。この副生成物であるアデノシンをSAMの原料であるATPへと変換できれば、本研究の目指すプラットホームの高効率化が期待できる。しかし大腸菌はアデノシンをAMPへとリン酸化する経路をもたないため、異種生物由来adenosine kinaseを共発現させ、その効果を検証する。
SAMの基質であるメチオニン合成強化はレギュレーター遺伝子metJの破壊により強化可能と報告があり、その破壊株を宿主として検討する。さらにグリシン開裂システム (GcvTPHL) やセリンヒドロキシメチル転移酵素 (GlyA) によるメチオニン供給強化も検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件) 産業財産権 (1件)

  • [雑誌論文] Heterologous and High Production of Ergothioneine in Escherichia coli2018

    • 著者名/発表者名
      Osawa Ryo、Kamide Tomoyuki、Satoh Yasuharu、Kawano Yusuke、Ohtsu Iwao、Dairi Tohru
    • 雑誌名

      Journal of Agricultural and Food Chemistry

      巻: 66 ページ: 1191~1196

    • DOI

      10.1021/acs.jafc.7b04924

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 大腸菌を宿主としたErgothioneineの発酵生産2018

    • 著者名/発表者名
      大澤 怜, 上出 倫敬, 佐藤 康治, 河野 祐介, 大津 厳生, 大利 徹
    • 学会等名
      日本農芸化学会2018年度大会
  • [学会発表] 大腸菌によるErgothioneineの発酵生産2017

    • 著者名/発表者名
      大澤 怜, 上出 倫敬, 佐藤 康治, 河野 祐介, 大津 厳生, 大利 徹
    • 学会等名
      第69回日本生物工学会大会
  • [学会発表] 放線菌におけるエルゴチオネイン生産とその役割2017

    • 著者名/発表者名
      佐藤康治
    • 学会等名
      環境微生物系学会合同大会2017
    • 招待講演
  • [産業財産権] エルゴチオネイン合成微生物、及びエルゴチオネインの製造方法2018

    • 発明者名
      大津厳生、河野裕介、田中尚志、大利徹、佐藤康治
    • 権利者名
      大津厳生、河野裕介、田中尚志、大利徹、佐藤康治
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2018-038057

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公開日: 2021-01-27  

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