昨年度までに開発した炭素材料・シリコン材料をそれぞれ電極ならびに装置構造体として用い、さらに隔膜により高電圧電極側とアース電極側を隔てることにより金属フリーで食品への臭い移りの心配を払拭した高電圧パルス電界(HV-PEF)殺菌装置である隔膜導入型HV-PEF殺菌装置を用いた殺菌処理についてさらなる検討を実施した。 少テーマとして計画した「食品中の生体由来分子への影響と長期保存に及ぼす効果」については日本酒をはじめとした液状食品を対象として殺菌を実施した後、低音保存した際の糖、アルコール、タンパク質成分の変化を調査した。その結果1ヶ月の保存期間においてこれら成分に変化は確認されず、HV-PEF殺菌処理により食品中の成分に影響するような因子の生成などは起きないことが確認され、HV-PEF殺菌処理は安全性の高い殺菌技術であることが確認された。 また昨年度新たに研究計画として導入した「隔膜導入型HV-PEF殺菌装置を用いた殺菌システムにおける高効率化」としては流通させる冷却水の導電率が殺菌効率に及ぼす影響を調査した。本装置では隔膜により隔てた装置内の高電圧電極側に冷却水、アース電極側に処理液を流通させる構造となっている。冷却水の導電率が高いときは殺菌効果がまったく確認されなくなり、導電率を下げることで殺菌効果が確認され冷却水の導電率が殺菌効果に大きく影響を及ぼすことが明らかとなった。特に冷却水導電率10 mS/cm付近から高い殺菌効果が確認され始め、5 mS/cmとした時最も高い殺菌効果が得られ液温の上昇も40℃以下に抑えられ、高い殺菌効果を得つつ食品への影響を抑えられる効率的な殺菌が可能であることを明らかとした。
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