研究実績の概要 |
コメタンパク質の酵素加水分解物から等電点電気泳動を用いてカチオン性ペプチドを調製し,(A)得られた画分のヒト病原性微生物に対する抗菌活性を明らかにすること,また(B)抗菌活性を有する画分からペプチドを逆相クロマトグラフィーを用いて精製し,含まれるペプチドを質量分析計とデータベースを用いて同定することを目的として検討した結果,本年度は以下の結果が得られた。 1.コメ糠タンパク質のペプシン加水分解物を等電点電気泳動によって分離した結果,等電点が異なる20の画分を調製することができた。また,200 mgのサンプルから得られた各画分の収量は,それぞれ5-10 mgであり,等電点が10以上のカチオン性ペプチドの収量は約15%であった。各画分のヒト病原微生物であるPorphyromonas gingivalis(歯周病菌), Streptococcus mutans (う蝕菌) , Propionibacterium acnes (アクネ菌), およびCandida albicans(日和見感染真菌)に対する抗菌活性を測定した結果,画分18,19,および20から抗菌活性を検出できた。 2.抗菌活性を検出した画分18,19,および20を,それぞれ逆相クロマトグラフィーを繰り返すことによって単一のピークを得るまで精製した後, 各ピークに含まれるペプチドをマトリックス支援脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF/MS)とイネゲノムデータベースを用いて同定した。その結果,高い信頼性を有する3種類のカチオン性ペプチドを見出した。 3.化学合成した3種類のカチオン性ペプチドは、いずれかのヒト病原微生物に対して抗菌活性を示した。
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