最終年度は,(A) コメα-アミラーゼの部分配列であるカチオン性ペプチドAmyI-1-18とそのアミノ酸置換体AmyI-1-18(N3L)の創傷治癒作用を明らかにすること,また(B)AmyI-1-18とAmyI-1-18(N3L)の創傷治癒の作用機構を明らかにすること,さらに(C)コメ糠タンパク質の酵素加水分解物から同定した3種類のカチオン性ペプチドの創傷治癒作用とその機構を明らかにすることを目的として検討したところ,以下の結果が得られた。 1.AmyI-1-18とAmyI-1-18(N3L)は,ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)に対して,それぞれ細胞増殖促進活性,血管新生促進活性,および細胞遊走促進活性を示したことから,創傷治癒作用を有することがわかった。 2.AmyI-1-18とAmyI-1-18(N3L)の血管新生促進活性は,血管内皮細胞増殖因子(VEGF)レセプター阻害剤の添加によって消失したことから,それらの血管新生促進作用はVEGFレセピターを介して発揮されることが明らかになった。また,細胞遊走促進活性は,細胞増殖阻害剤の添加によって減弱したことから,それらの細胞遊走促進活性は,細胞増殖に伴う遊走の促進に依存していることが明らかになった。 3.コメ糠タンパク質の酵素加水分解物から同定した3種類のカチオン性ペプチドも,創傷治癒活性を有していた。また,血管新生促進作用はVEGFレセピターを介して発揮され,細胞遊走促進活性は,主に細胞増殖を伴わない遊走の促進に依存していることが明らかになった。
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