リグノセルロース系バイオマスの生物的利用においては、バイオマスから得られるグルコース及びキシロースをともに活用することが重要である。赤色酵母Xanthophyllomyces dendrorhousはグルコース及びキシロースをともに資化することができ、細胞内にアスタキサンチンを蓄積し、細胞外にキシリトールを分泌する能力を持つ。本研究では種々のX. dendrorhousを用い、コーンコブ(とうもろこしの穂軸)を原料としたアスタキサンチン・キシリトールの同時生産を目指した培養工学的検討を行った。 6種のX. dendrorhousを用いキシロース及びグルコースを含有する合成培地により回分培養を行ったところ、JCM9681株が最も良好なアスタキサンチン・キシリトール生産を示した。 次にこの菌株を用い、乾燥コーンコブを酸加水分解・酵素糖化したコーンコブ加水分解液(CC加水分解液)により回分培養を行ったところ、良好な菌体増殖とともにアスタキサンチンが最大3.5 mg/L生産され、CC加水分解液を用いたアスタキサンチン生産が可能なことが明らかになった。一方、キシリトールは殆ど蓄積されず、CC加水分解液中に高濃度に含まれる各種ミネラルの影響により生成したキシリトールの代謝分解が促進されたことが明らかになった。 キシリトールの分解抑制のためにCC加水分解液からミネラル成分を除去することは現実的ではないと考えられたことから、最初好気条件で培養しアスタキサンチン生産を行い、その後微好気条件としてキシリトール生産を行う二段階培養による同時生産を検討した。その結果、アスタキサンチンが最大1.2 mg/L生産されかつキシリトールが最大11.2 g/L蓄積し、酸素供給条件を制御した二段階培養により、CC加水分解液を用いたアスタキサンチン・キシリトールの同時生産が可能なことが明らかになった。
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