研究課題/領域番号 |
16K06874
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
河邉 佳典 九州大学, 工学研究院, 助教 (30448401)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲノム操作工学 / ゲノムマニュピレーション / 鶏卵バイオリアクター / ゲノム編集 / CRISPR-Cas9 |
研究実績の概要 |
本研究では、これまでに我々が研究を進めてきたゲノム部位特異的遺伝子導入ツールや昨今革新的な技術であるゲノム編集ツールを用いることで、胚レベルでダイレクトにゲノム操作可能な技術の開発と鶏卵バイオリアクターをはじめとする鳥類のバイオテクノロジーへの応用を目指した、鳥類ゲノムマニピュレーションエンジニアリング技術の創製を目的としている。初年度は、特定ゲノム部位におけるゲノム編集のためのへニワトリ細胞への遺伝子導入条件の検討と培養細胞レベルでの評価を集中的に行った。 ニワトリ細胞に対してエレクトロポレーション法にて遺伝子導入を行い評価したところ、導入遺伝子の細胞における発現率や導入細胞の生存率を最大化する条件が決定できた。性決定制御関連遺伝子のエキソン内を編集可能なガイドRNAを発現するベクターをニワトリ細胞へ遺伝子導入し、該当遺伝子座における変異導入を解析した。挿入欠損検出アッセイ(T7EIアッセイ)を行ったところ、編集サイトにおいて30%以上のIndel値が認められた。T7EIアッセイと同様に調製したPCR産物をサブクローニング用プラスミドにてクローニング後、シークエンス解析したところ、同様の効率でクローンに変異導入があり、PAM配列周辺での変異であることが確認できた。このことから、非選択圧下においても編集可能であることがわかり、胚でのゲノム編集に適用可能であることが示唆された。 卵白タンパク質遺伝子座において複数のsgRNAを設計し、発現ベクターを構築後、ニワトリ細胞へ導入した。T7EIアッセイを行い、ゲノム編集の候補となる編集部位を同定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ニワトリ初期胚への遺伝子導入を想定して、マイクロインジェクション法によるニワトリ培養細胞への遺伝子導入条件の検討を行い、導入遺伝子発現が最大化する条件を見出した。産業応用上重要な項目のひとつであるニワトリオス・メスの性制御における基礎的知見のため、性決定関連遺伝子におけるゲノム編集可能なガイドRNAの設計を行った。デザインしたgRNAを用いて培養細胞レベルで検討したところ、非選択圧下でも高い効率で編集されていた。このことから、胚レベルでのダイレクトなゲノムマニピュレーションに適用可能であることが示唆された。卵白タンパク質遺伝子座におけるゲノム編集も試み、候補サイトを選抜することができた。また、標的遺伝子座へのノックインとして、動物細胞の既知遺伝子座へのノックインベクターを作製し、組換え抗体遺伝子を効率よくノックインする技術開発を行った。これらの成果の一部を複数の国内学会に報告した、または報告予定である。本年度はおおむね研究計画書どおりに実行することができ、目的を達成することができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
申請書の実験計画に基づいて、以下の検討項目課題を行う。 ・ニワトリ初期胚における遺伝子導入条件の検討と目的遺伝子発現の最適化 ・各ゲノムマニピュレーションサイトにおけるノックインベクターの構築 ・ノックインニワトリの作製と導入遺伝子の発現解析
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次年度使用額が生じた理由 |
培養細胞レベルの検討を中心に実施したため。次年度は胚レベルでの検討と胚操作を実施し、本年度よりも増加が見込まれるため、未使用額については次年度研究費と併せて使用する計画である。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、ノックインベクター構築、細胞培養、ウイルス生産、遺伝子導入、初期胚操作等を精力的に行っていくことで、研究を確実に遂行していく。そのため、遺伝子工学関連試薬、培養培地・血清とともに実験動物(有精卵)の購入のため、消耗品費を多く当てる予定である。旅費は関連学会における成果発表と情報収集のために使用し、謝金は英文校閲費のために使用する。
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