最終年度は、前年度までの知見をベースに主として以下の3つに関連する研究を行った。 1)前年度までに選出した卵白タンパク質(OVA)遺伝子座におけるgRNAを用いてゲノム編集を行い、ニワトリ体細胞(DF-1細胞)のOVA遺伝子座へ目的遺伝子(GFPおよびZeoR)を有するドナーベクターをノックインした。薬剤選抜後得られた細胞クローンからゲノムDNAを抽出し、5’および3’ジャンクション領域でゲノムPCR解析したところ、解析したすべての細胞クローンで期待通りノックインしていることがわかった。一方、OVAプロモーター領域に様々なgRNAを設計し、CRISPR-dCas9転写活性化システムを用いて遺伝子発現を誘導させた。RT-PCR法で評価したところ、OVA遺伝子転写産物が認められた。同システムをOVA遺伝子座ノックイン細胞に適用したところ、レポーター遺伝子の発現を誘導することができた。2) 培養細胞を介さない鳥類初期胚への直接遺伝子導入によるトランスジェニック鳥類作製技術の開発を試みた。エレクトロポレーションで使用する電極や電圧、あるいはパルス幅などを様々に検討したところ、胚発生に影響が少なく、全身へ高効率に遺伝子導入効果が認められる最適な導入条件を決定することができた。3)網羅的遺伝子発現解析から得られた複数の初期化因子を高効率に遺伝子導入するため、2Aペプチドを介して発現可能なトランスポゾンベクターを作製し、ニワトリ体細胞(CEF)へ遺伝子導入した。遺伝子導入試薬を検討することで、LF3000を7.5uL使用した場合、最も遺伝子導入効率が高くなった。薬剤選抜後レポーター遺伝子の発現が強く見られたため、初期化遺伝子のゲノムへの組込みが示唆された。引き続き検討が必要なものの、高効率で高品質な鳥類多能性幹細胞の樹立への指針が定まったといえる。
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