H30年度は,後流現象解析数値計算法の研究における次の3つの課題,1) 後流積分法の長所を生かした抵抗値算出 2) 超音速飛行する翼後流の解析 3) 後流積分抵抗計算インターフェースの作成を行った. 1) については,自作した後流積分抵抗算出ソフトを航空機や翼周り流体場の様々な数値計算結果に機能させて,後流積分法の長所を生かした抵抗計算が各種流れ場に適用できることを示した.長所として「3次元物体形状の複雑さに左右されることなく物体後流の物理量を2次元平面上で簡単に積分すれば抵抗値が求まる」「形状抵抗+波動抵抗+誘導抵抗への抵抗分解が可能」,「数値手法や格子分布などの離散化誤差による擬似抵抗の除去可能」,「抵抗原因となる物理要素の可視化」が挙げられる.各種の流れ場計算結果に対して後流積分を行い,上述した長所が得られていることを確認した.ボクセル格子を用いた流れ場計算のケースにおいては,物体表面での積分が必要な抵抗計算法では精度の良い値が得られないが,後流積分では良い値が得られることが確かめられた.また,後流積分領域の設定を適切に選ぶことで擬似抵抗の除去を行う事が出来,より精度の高い抵抗計算が可能であることを示した. 2) は当初計画していなかったが,超音速機開発が世界レベルで活発化してきたことから,音速から超音速にかけての流れ場における後流現象解析を矩形翼に関して行った.後縁衝撃波や音速近辺での後流に生成される衝撃波の興味深い現象が明らかになった. 3) については,「抵抗原因となる物理要素の可視化」画面と連携させて,後流積分による抵抗計算と抵抗分解を行う,ユーザーフレンドリーな後流積分計算システムを作成した.非定常流体場の後流積分法の確立までには至らなかったが,抵抗原因の可視化を通じて数値解の質的評価が出来る可能性を示唆する結果も得られ,有意義な研究成果が得られた.
|