研究課題/領域番号 |
16K06885
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西川 雅章 京都大学, 工学研究科, 准教授 (60512085)
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研究分担者 |
北條 正樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (70252492)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 複合材料 / 計算機シミュレーション / 繊維配向制御 / 賦形プロセス / 破壊解析 |
研究実績の概要 |
本研究では,炭素繊維複合材料(CFRP)構造製造時の賦形プロセスに依存して変化する繊維配向の予測法と,製作された局所繊維配向に対して強度予測を行う手法を確立し,繊維配向の最適化による構造強度向上への寄与を目的に研究を遂行し,以下の成果を得た. 1. 構造製造時の賦形プロセスにおける繊維配向を予測する方法として,炭素繊維織物を対象として,織物の基礎特性を考慮した動的有限要素解析による賦形シミュレーションについて検討した.この手法により,基材の特性や賦形対象形状が賦形後の繊維配向や欠陥発生に及ぼす影響について検討した.幾何学的解析により,理論的な繊維束配置(射影経路と測地線経路)を求め,シミュレーション結果と比較することで,繊維配向変化をもたらす面内せん断変形や目ずれ発生位置と賦形対象形状との関係について考察した.幾何学的解析は,賦形対象形状に対して面内せん断変形や目ずれ発生位置の傾向を評価する上で有用である. 2. 基材の特性が賦形時の定量的な変形量に及ぼす影響については,有限要素シミュレーションによって傾向を把握することが可能である.繊維束引抜き特性と面内せん断特性を考慮することで,実験における織物基材の目ずれや面内せん断変形の傾向を評価可能であることを明らかとした. 3. 局所繊維配向を考慮した複合材料の破壊解析法として,固体を粒子とそれをつなぐ結合で表現し,結合の破断条件により破壊を表現するpediynamics解析法について,解析精度に関する検討を実施した.繊維とマトリクスの結合を別々に表現して複合材料の層の物性を表現するOterkus-Madenciのモデルと任意の繊維配向角に対する異方性弾性体モデルを扱うことが可能なGhajariらの計算手法とを比較・検証することで,繊維配向の再現の精度について一定の知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炭素繊維複合材料の構造の賦形プロセスに関して,シェル膜モデルを基礎とした有限要素解析により,繊維配向変化を予測することが可能となってきた.賦形形状変化を模擬したケーススタディを実施し,幾何学解析による予測との比較により,形状の影響のみならず,基材特性の影響が大きく影響していることが明らかとなり,実験結果を裏付ける結果として新しい知見を得ることができた.また,本手法を熱可塑性プリプレグ基材に応用する基礎として,高温下の摩擦特性を取得する実験を構築することが可能となった.この物性取得手法を応用することで,プリプレグ基材での賦形解析の実施も可能となるものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,これまでの研究を発展させて,繊維配向変化を予測する上でプリプレグ基材の賦形に関する基礎的検討を進めていく予定である.特に摩擦試験結果に関する力学モデル化が重要であることが分かってきているので,主にその検討を実施する予定である.また,CFRP内部の繊維配向と強度の関係を評価するため,モデル材料を用いて実験的にX線CT法により繊維配向を可視化することに試み,モデル化に有用な知見を得ることを検討する.これらの検討を基に,計算機シミュレーションにより複合材料構造賦形時の繊維配向変化とそれによる複合材料構造の強度や内部損傷発生を把握して制御・最適化するための基礎を確立することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
賦形試験実施用の治具製作等を検討していたが,共同研究を行っている機関で導入された試験装置を実施可能となり,その装置を利用して本年度の研究に係る実験を進めたため,未使用額が発生した.当該機関への打合せ・試験実施等の旅費や試験実施のための消耗品として使用することを検討している.
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