研究課題/領域番号 |
16K06886
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 克彦 大阪大学, 工学研究科, 教授 (30402481)
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研究分担者 |
莊司 泰弘 大阪大学, 工学研究科, 助教 (70582774)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 宇宙機 / 姿勢制御 / CMG / 地上実験 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,宇宙機の姿勢制御アクチュエータが複数台の可変速1軸ジンバルCMG(Control Moment Gyro)である場合に,宇宙機を高速かつ確実に姿勢変更させるための姿勢制御系を確立することである.可変速1軸ジンバルCMGを用いることで,アクチュエータの台数を減らせる可能性があり,また特異点の通過が容易になると考えられる. H28年度はこの可変速1軸ジンバルCMGのハードウェア設計を行い,ホイールモータにDCモータ,ジンバルモータにステップモータを用いて,ホイールのトルク制御と低速時の滑らかなジンバル角駆動を可能とした可変速1軸ジンバルCMGを4台試作した.また,この可変速1軸ジンバルCMGの制御回路の設計を行い,全体の制御を統括するファンレスPCと各CMGの制御を行うボードPCの二段構成の電気制御回路と,それに対する電源系を製作した.さらに,この可変速1軸ジンバルCMGを4台搭載した宇宙機の姿勢制御実験を行う空気浮上実験装置の製作を行った. また,これらのハードウェア製作と並行して,可変速1軸ジンバルCMGを2台用いる宇宙機の姿勢制御系について検討を行い,宇宙機の姿勢変更時間を最短にする姿勢制御計画を求め,シミュレーションでその性能を確認するとともに,その姿勢制御計画を実験装置に実装して確認実験を行った.この確認実験では基本制御機能を確認できたが,さらに性能向上をめざして改修中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
可変速1軸ジンバルCMGとその制御回路および地上実験装置のハードウェア製作を行い,ほぼ想定通りの性能が得られたことで,ハードウェア面においては順調に推移していると考えられる.ただし,CMGを可変速とする回転モータについて,寸法や重量面での制約から最大トルクがやや不足気味となった.この場合,地上制御実験装置に作用する重力トルクが大きくなると,CMGの出力トルクが不足する恐れがある.そのため,地上制御実験装置の重力トルクを最小限に抑える必要があり,重力トルクの原因となる重心ずれを精度よく同定し補償する補償方法の検討をあわせて実施した.この結果から,重心ずれを予定通りに解消できれば出力トルク不足は解消できる見込みである. また,ソフトウェア面においては,可変速1軸ジンバルCMGが2台の場合の,制御性能解析および最短時間経路設計を行い,2台構成の場合の性能限界に関する知見を得るとともに,姿勢制御系の実験装置への実装を行い,地上実験を実施した.2台構成の場合の実験まで実施できたことで,ソフトウェア面においてもほぼ順調に推移していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
可変速1軸ジンバルCMGが2台の場合の性能解析,最短時間経路を用いた姿勢制御実験をまず完遂させる.この結果はH29年6月の国際会議において発表する予定である.あわせて,地上実験装置の重心調整を高精度化して,実験装置に働く重力トルクの影響を最小化する.このような最小化を行っても,なおホイール駆動トルクが不足する場合には,電源電圧の変更やホイール駆動モータの変更で対処する.H29年度においては可変速1軸ジンバルCMGが3台の場合の姿勢制御則について検討を行い,とくに特異点の通過時においてこれを滑らかに通過する姿勢制御則の開発を行う.この姿勢制御則をシミュレーションによって動作確認し,確実に動作することを確認できれば地上実験を行う.すでに可変速1軸ジンバルCMGは4台製作しているので,このうちの3台を用いて地上実験装置による実験を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今後の実験結果をもとにハードウェアの改修を行う予定であり,変更の可能性のある部品や保守部品については,実験状況に応じて最終決定するよう購入時期を延期させたため.
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次年度使用額の使用計画 |
可変速1軸ジンバルCMGのモータや制御基板については実験結果に基づいて改修を加えるため,その部品購入費とする.
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