研究課題/領域番号 |
16K06887
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
谷 泰寛 九州大学, 工学研究院, 准教授 (80380575)
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研究分担者 |
麻生 茂 九州大学, 工学研究院, 教授 (40150495)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 航空機 / 主翼 / 突風荷重軽減 |
研究実績の概要 |
本研究は、航空機の突風荷重軽減のために、翼内部に設置した流体を通過可能なPorosity分布可変機構を提案し、その流体現象を明らかにし、突風時の動的空力特性を解明することにより、小型機への適用も考慮した機構の実現を目的としている。 初年度の研究では、Porosityによる突風荷重軽減の基本特性の把握を目的として、風洞試験及び数値解析を実施した。翼内部の気流通過には、多孔表面と翼内部ベーンの組み合わせ方式を導入し、翼まわりの圧力差によりPorosity分布が変化する機構を考案した。 NACA0015翼型をベースとして、解析で得られた翼表面圧力分布をもとに表面多孔状態分布を設定した。この分布に基づき、基本的特性の取得のために2次元的な風洞試験を計画し、PassiveにPorosity分布を変化させる機構を組み込んだ風洞実験模型を製作した。翼模型表面は交換式として孔径の異なる多孔板を用い、内部に弾性材を用いた撓み変形によりPassiveにPorosity分布変化が得られるベーン機構を構築した。九州大学所有の小型風洞に2次元測定部とマイコン制御による突風発生装置を設置し、突風形状及び強さ、迎角、Porosity分布を試験条件パラメータとした。風洞両側壁の3分力天秤による非定常空気力計測、小型5孔ピトー管による気流ベクトルを計測した。これら突風時時間履歴データとスモークワイヤー気流可視化により、Porosity分布と突風応答レベルについて相関関係データを取得した。 また、本機構を有する翼まわりの流れの現象を解明するために、代表的なPorosity分布形態についての2次元CFD解析を実施し、さらに次年度以降のための計算環境及び手法を整備した。 これら、本年度の成果内容について国内学会で2件の発表を行うとともに、Webページによる公表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Porosity分布可変翼について、パラメータを変更させた風洞試験により、ほぼ予定どおり基本的な特性データを取得した。その結果、本機構による突風荷重軽減の実証データを取得するとともに、Porosity分布による突風荷重軽減効果の差異に関する基本データを取得した。また、数値解析においては、基本となる2次元解析を実施し、上下面の圧力差を利用することで、翼内気流が発生することを示すとともに、解析手法を確立した。また、これらの成果について国内学会にて2件の発表を行った。以上、総合的に見て、当初の計画に対して現在までおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の結果を元に、Porosity分布を変化させた翼について、Porosity分布と突風応答の相関関係を抽出し、最適なPorosity分布を明らかにする。また、より効果が高く幅広い応用に向けたActiveなPorosity分布可変翼の検討を行う。迎角・圧力センサ、突風検出小翼等により気流変化を検出し、アクチュエータによりPorosity開孔機構を駆動するPorosity分布可変機構を開発する。また、翼構造内への組込と実現性の検討、機構の質量と寸度推算から、機体の飛行性能・特性への影響を明らかにする。 実験的研究としては、改良したPassiveな機構、及び、ActiveなPorosity分布可変機構を組み込んだ風洞試験模型として、基本特性を取得するための2次元模型の改修と3次元模型の製作を行う。製作した模型を用いて風洞試験を実施し、突風時の応答特性データを計測し、機構の有効性、分布との相関データを取得する。3次元模型については九州大学所有の低騒音風洞を使用し、さらに風洞内設備である吊線天秤を流用し、風路内に模型をワイヤーで吊り下げた懸吊風洞試験も実施することで、突風時の動的な機体動揺の評価を行う。 数値的研究としては、3次元CFD解析を実施し、Passive 及びActiveなPorosity分布可変機構による流れのメカニズムを明らかにする。また、風洞実験データとの検証を行うことで、解析の精度確保を得る。さらに、運動解析シミュレーションを行い、本機構による突風荷重軽減の機体動揺低減への寄与について明らかにする。 以上の成果につき、Porosity分布可変翼における非定常流れ場と動的特性の解明、及び、突風荷重軽減への効果について、現象のメカニズムを理解するとともに系統的にまとめ、国内外の学会発表、論文執筆、Webページによる公表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初計画では海外における国際学会への発表を予定していたが、研究開始から応募締切までの期間が短く、また、使用可能な風洞の日程が厳しく応募が困難であったことから、確実な研究成果が得られた後に発表することとしたため、平成28年度支出は当初予定よりも少ない支出額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
昨年度までの研究において確実な研究成果が得られており、この成果を元に、平成29年度において海外における国際学会での成果発表を予定しており、この次年度使用額は、そのための旅費および学会参加費として使用する計画である。
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