| 研究課題/領域番号 |
16K06889
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| 研究機関 | 首都大学東京 |
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研究代表者 |
櫻井 毅司 首都大学東京, システムデザイン研究科, 准教授 (10433179)
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| 研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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| キーワード | 燃料後退速度 / 旋回流端面燃焼 / ハイブリッドロケット / WAX燃料 |
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| 研究実績の概要 |
今年度は気体酸素（GOX）を用いた場合のWAX燃料の旋回流端面燃焼方式における軸方向燃料後退速度予測式の構築とO/F一定燃焼の実証を主眼に下記の取り組みを行った．加えて，液体酸素（LOX）を用いた予備燃焼実験も行い，GOXと同じ方法で着火が可能であり燃焼も安定であることを確認した．
WAX／GOXを用いた燃料後退速度のデータを取得するため，GOX流量，燃焼時間，GOXの噴射位置，燃焼室直径，GOXの旋回強さをパラメータとした燃焼実験を行った．軸方向燃料後退速度は燃焼時間に対してばらつきの大きい結果を示し，その原因は本質的な燃料後退にあるのではなく，加熱された燃焼室壁面によりWAX燃料が溶融することが原因であると推定した．この問題を解消するため以降の燃焼実験では壁面材質を熱伝導率の低い耐熱材に変更した．GOXの噴射位置とWAX燃料端面との距離が離れるにつれて同一のGOX流量でも軸方向燃料後退速度が低下することが分かった．この結果は燃焼時間に対してO/F値が変化することを意味する．燃料端面の半径方向や周方向の後退速度分布も調査し，周方向には対称な分布を持つこと，また半径方向には中心と外周側に後退速度の極大値を持つ特徴があることを明らかにした．燃料後退速度の影響パラメータとしてGOX流量，噴射位置と燃料端面の距離，旋回強さを選び，軸方向後退速度予測式を構築した．
WAX／GOXを用いる旋回流端面燃焼方式のエンジン性能として，軸方向燃料後退速度は当初目標値である5.0mm/sが達成可能であり，構築した予測式をもとにGOX流量を調節することで当量比の制御も可能となる技術目途を得た．一方，燃焼効率の指標となるC*効率は90％付近であり，実用化に向けては95％以上を得られるよう改善が必要である．加えて，O/F値は燃焼中に変化することが推測され， O/F一定燃焼についても検討が必要である．
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に計画したWAX／GOXを用いる旋回流端面燃焼方式エンジンの軸方向燃料後退速度予測式について，エンジン設計パラメータであるGOX流量，GOXの噴射位置，燃焼室直径，GOXの旋回強さに対して調査し，これらを加味した予測式を構築した．軸方向燃料後退速度は研究目標値の5.0mm/sを得た．これらの研究成果は今年度の目標としたものである．一方，O/F値は燃焼時間に対して低下する結果が示唆されており，目標としていたO/F一定燃焼についてはWAX／GOX推進剤の組み合わせにおいてもさらに検討が必要である．平成29年度に予定したLOXを用いた場合の燃焼特性調査について，次年度の目途を得ることを目的に予備燃焼実験を行った．その結果，GOXを用いる場合と着火方法や酸化剤の噴射方法などについて本質的な変更を行うことなく着火・燃焼が可能であることを確認した．
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| 今後の研究の推進方策 |
次年度には当初計画したLOXを用いた場合のWAX燃料旋回流端面燃焼方式エンジンの高燃料後退速度と高燃焼効率の実証に加えて今年度の積み残し課題にも取り組む．
１．LOXを用いた場合の高燃料後退速度と高燃焼効率の実証
①LOX燃焼時の可視化実験： 旋回流端面燃焼方式のアイデアの一つである旋回するLOXが燃焼室内の外周側を流れ，燃焼ガスはその内側を流れる様子，および端面燃焼を可視化観察によって確認する．GOXを用いた場合の端面燃焼の様子と比較することでLOX気化の程度や燃焼状態の差異を評価する． ②WAX／LOX推進剤に対する軸方向燃焼後退速度の調査と予測式の構築：LOXとGOXでは密度の差があるため，噴射インジェクターの形状および付与する旋回の強さSgが変わる．これに伴ってGOXに対して作成した燃料後退速度式を改良することが予想される．可視化実験の結果をもとにLOX燃焼時の燃料後退に影響する物理因子を再評価する．③高燃焼効率の実証：燃焼室内の観察結果とC*効率の結果を総合し，LOX気化や燃焼効率の改善有無を判断する．改善が必要の場合にはインジェクターや燃焼室および燃料形状の工夫を行う．可視化実験からエンジン性能評価までのフィードバックを繰り返し，目標性能（後退速度5 mm/s以上，C*効率95％以上）の達成を目指す．
２．今年度の積み残し課題
①WAX／GOX推進剤に対するO/F一定燃焼の実証：燃焼実験より得られた燃料後退速度と様々なエンジン設計パラメータとの関連について考察を深め，GOX噴射位置や方法，燃料の形状（端面が凹型や凸型など）などに着目してO/F一定燃焼の実現可能性を探る．
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| 次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は713円であり，実質的には当該年度の所要額を予定通り支出している．
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| 次年度使用額の使用計画 |
当該年度の支出予定をほぼ実施したため，次年度使用額は翌年度請求助成金と合わせて有効に活用する．翌年度分として請求した助成金やその使用計画には変更はない．
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