研究課題/領域番号 |
16K06891
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
小柳 潤 東京理科大学, 基礎工学部材料工学科, 講師 (60386604)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | CFRP / 熱防御材 / 熱伝導 / 内部ガス圧 / 層間剥離 |
研究実績の概要 |
アブレーターは1000~3000℃以上の温度で活性雰囲気において急速加熱される。その為、加熱時の酸化に関する研究や熱伝導、炭化変色層進行の解析に関して多くの研究がなされている。一方、アブレーター特有の現象である、急速加熱環境下の熱変形挙動を追従することは出来ていない。ここでの熱変形挙動とは線形熱膨張ではなく、熱分解に伴う材料の収縮や、熱応力に伴う損傷等の不可逆変形である。予測信頼性の向上には現象の理解及び数値モデル化が不可欠である。本研究では、急速加熱環境下におけるアブレーターの熱変形挙動を対象とする。ステレオDIC法により三次元変形量を測定、さらにガス圧力解析を行い、実験との比較から、変形及び内部損傷の発生機構を解明することを目的とした。 急速加熱環境下におけるアブレーター変形挙動のその場観察及び三次元変形量測定を行った。加熱装置には、赤外線加熱が可能なIRランプ加熱試験装置を用いた。試験片には100×100×5mmのクロスCFRP積層板を使用、78kW/m2で60秒間加熱した際の変形量をステレオDIC法により測定した。結果として内部ガス圧の増加による層間剥離発生挙動をその場観察することに成功した. このことをシミュレーションで再現すべく,自作の差分法コードを用いて実験時の内部のガス圧力を計算した。この結果を実験と比較することで、急速加熱時の変形・内部損傷発生機構の解明を目指した。解析には熱伝導やガス質量の発生、Darcy則で表されるガス流動の他に、熱分解に伴う吸熱、物性値の変化、損傷発生に伴うガス圧力低下も考慮した。現段階では未定のパラメータが数多くあり定量的な議論はできない段階にあるが,時間の経過とともに内部ガス圧が増加して層間剥離に至るという現象をシミュレートすることには成功した.今後は各パラメータを正確な値に近づけ,定量的なシミュレーションを目指す.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
急速加熱環境下での面外変形のその場観察に成功した.加熱面から熱分解を考慮した熱伝導解析を実施し,内部ガス圧の増加をシミュレートする1次元のコードを作成した.これにより定性的にはガス圧により層間剥離がおこるであろうことが確かめられ,次年度は各パラメータの正確な値の探索を通して,定量的な数値解析が達成されると期待できる.
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今後の研究の推進方策 |
ガス透過係数,熱伝導率,比熱,層間強度,熱分解速度やその他の各種パラメータを定量的に正確な値を設定し,いつ層間剥離が起こるのかを正確に予測できる計算コードを作成する.一方,29年度は28年度用いたランプ加熱試験の他に,アーク風洞加熱試験を利用し,さらなら急速加熱環境下での層間剥離の挙動予測を行う.30年度はこの層間剥離を回避するための手法について考案する.
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次年度使用額が生じた理由 |
少額を処理できなかったため次年度に繰り越す.
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次年度使用額の使用計画 |
来年度予算に組み込んで使用する.
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