研究実績の概要 |
昆虫の翅に相当するレイノルズ数における翼の空力特性を、独自の高感度天秤を組み込んだ超小型低圧風洞装置を開発することによって研究してきた。本風洞装置はこれに先立って採択された科研費(課題番号25630395)によって開発したものであるが、本研究の目的は、この装置を使った実験によって、昆虫サイズ翼特有の空力特性を明らかにすることである。研究を進めた結果、昆虫の翅に見られる独特の形状、例えばトンボの翅に見られるコルゲート薄翼や甲虫の前翅に見られる大きなキャンバの円弧薄翼の二次元翼特性において、これまでに得られていないレイノルズ数1000~10,000の範囲で空力特性を得ることができた。そのため、共同研究者はCFDでもコルゲート翼の解析を進め、コルゲート翼の凹凸にできる渦を捉えることができた。また、2016年に受理された円弧薄翼に関する論文が2018年3月に日本航空宇宙学会論文賞を受賞した。 一方、三次元翼の実験を進めた結果、低アスペクト比翼の空力特性に、この超低レイノルズ数領域特有の現象があることが分かった。すなわち、一般的に低アスペクト比翼の揚力係数に付加される非線形な渦揚力が、昆虫サイズの翼になると消失することが分かった。この結果は過去に報告されたことのない研究成果と思われる。本実験結果は、2017年に論文として投稿し受理された。2018年はさらに他の平面形やアスペクト比に関する系統的な実験を行いさらにその現象を明確にした。この結果は複数の学界で発表したが、さらに論文として投稿し現在審査中である。これ以外にも、昆虫サイズの翼の空力特性や物体の抗力に関する実験を行い、多数のデータを得ることができたため、その都度学会等で発表を行った。
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