研究課題/領域番号 |
16K06898
|
研究機関 | 明石工業高等専門学校 |
研究代表者 |
梶村 好宏 明石工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (20403941)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 宇宙環境 / 磁気シールド / 磁気セイル / リングカレント / 六ホウカランタン / 熱陰極 / プラズマ源 |
研究実績の概要 |
本研究は、宇宙飛行士や衛星を、宇宙放射線から守るための磁気シールドを、プラズマ噴射によるリングカレント形成によって強化させる手法を実験によって実証する。平成29年度は、昨年度実施した、200[MeV]に相当するエネルギーを持つ宇宙線に対するシールド生成条件をさらに拡張させ、0.5~320[MeV]のエネルギーを持つ宇宙放射線を防御する磁気シールドについて、リングカレントを用いた場合の性能検討を行った。これらのエネルギーに対し、宇宙機を防御する目的で、磁気シールドを形成した場合、コイル(半径2m、電流:127[A])とリングカレント(半径:10[m],電流:200[A]):磁気モーメント50倍で320MeVの宇宙線を9割減できることが分かった。この結果を再現するため、JAXA宇宙科学研究所の共同利用施設である先進プラズマチャンバーを用い、実験による実証を行った。実験は、宇宙放射線を模擬するプラズマ源に対し、磁気シールドを模擬するコイルを設置し、磁気シールドON,OFF時のシールド(コイル内部)に侵入するプラズマの量をダブルプローブ法を用いて測定し、シールドの効果を確認することができた。また、シールド生成用のコイル近傍に、新たに開発したLaB6(六ホウカランタン)を熱陰極としたプラズマ源を設置し、低電力かつ高密度のプラズマの生成に成功した。磁気シールドを作動させた際にリングカレント構造の撮像に成功し、シールド中にリングカレント構造を生成することができることを確認した。これらの結果は、宇宙環境シンポジウム等の学会で発表を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、3次元数値シミュレーションを実施し、宇宙放射線のエネルギー、コイルの磁気モーメント、宇宙機周辺に形成するリングカレントの大きさをパラメトリックに変更し、宇宙機(半径2mの空間)に突入する宇宙線の個数を評価し、磁気シールド性能の評価を行った。一方、本結果は、静磁場に対して解析を行った結果であり、次年度は宇宙線が作る磁場やリングカレント自身が形成する磁場の影響を自己矛盾なく解く3次元ハイブリッド粒子モデルを用いる手法で解析を行い、さらに精度を向上させる必要がある。真空チェンバー実験については、数値解析結果をもとに、プラズマ放出によるリングカレント形成時の磁気シールド性能を定量的に評価することを目的として実施した。その結果、磁気シールドを作動させた際のリングカレント構造の撮像に成功し、シールド中にリングカレント構造を生成することができることを確認した。このように当初の実験計画に対し、順調に進展している。
|
今後の研究の推進方策 |
宇宙線と磁気シールドの数値シミュレーションにおいて、イオンの粒子効果を考慮し、イオン電流による磁場も自己無撞着に解く3次元ハイブリッドプラズマ粒子ツールを用いて解析を実施し、平成29年度に得られた結果と比較し、シールド性能を評価した結果の妥当性を確認し、実験に向けたパラメータセットを算出する。また、リングカレント生成のためのプラズマ生成源について、プラズマ生成時のパラメータとして、流量、熱陰極(LaB6)への通電電流、陽極電圧、放電室形状などを変化させた際のプラズマパラメータの測定を行い、より効率の良い動作パラメータを把握する。次に、コイル近傍からプラズマを噴射し、リングカレントを形成した状態で、コイル近傍のプラズマの密度、温度の分布や、磁束密度の分布を測定する。最終的には、宇宙線(太陽風など)を作用させる実験を行い、その時のコイル内に突入する粒子数や粒子エネルギーの計測を行い、磁気シールドの性能および性能向上を評価すると同時に、推力の測定をロードセルによって計測し、推力発生機能を兼ね備えた磁気シールドの性能と実現性についてまとめる。
|