研究課題/領域番号 |
16K06899
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
高柳 大樹 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 人事部, 主査 (70513422)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 航行宇宙流体力学 / 膨張波管 / 赤外域発光強度スペクトル計測 |
研究実績の概要 |
本研究ではまず赤外域輻射強度スペクトル計測システムの妥当性を検証するために、衝撃波モードにおける低速域赤外スペクトル計測を実施した。本実験においては赤外域での透過率の高いMgF2窓を製作するとともにこれまで真空紫外域発光分光法のために設計,製作したエナジーオプティマイザー用いることによって十分な光量,空間分解能が得られる光学系を構築した。NASA Ames Research Centerにおいて実施された同条件の結果と比較することで本システム妥当性の検証を行うことができた。次に膨張波管モードで運転することで火星大気突入環境を模擬した気流を生成した実験を行った。まず気流条件を調べるためにピトー圧計測及び衝撃波離脱距離を計測し、数値計算結果との比較を実施した。その結果、振動温度が並進温度よりも高い非平衡流であることが示唆された。次に可視域及び赤外域発光強度分布計測を実施した。その結果、可視域では模型の前面のみにおいて発光が取得された一方で、赤外域では模型前面のみでなく、模型背面の広い領域で発光が取得された。これは可視域の発光は模型前面で生成された衝撃層内において起こった解離反応により生成された原子からの発光が主体的であり、模型背面では再結合し消失する一方で、赤外域の発光は解離せずに残った二酸化炭素分子からの発光によるものであるためと考えられる。最後に新たに集光光学系を設計,製作し、赤外輻射強度スペクトルを取得した。赤外域発光強度は先に実施した赤外域発光強度分布計測と同様の傾向を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はおおむね順調に進展している。2016年度ははじめに赤外域輻射強度スペクトル計測システムの妥当性を検証するために、衝撃波モードにおける低速域赤外スペクトル計測を実施し、NASA Ames Research Centerにおいて実施された同条件の結果と比較することで本システム妥当性の検証を行うことができた。次にピトー圧計測や衝撃波離脱距離の計測を実施し、数値解析結果と比較することで気流診断を実施した。この際、ピトー圧計測については研究協力者の野村哲史氏、数値解析計算においてはアドリアン・ルマル氏の協力を得ることで順調な進展を得ることができた。また膨張波管における赤外域発光強度スペクトル計測を実施するために新たな集光光学系を設計製作し、赤外域発光強度スペクトルを計測できることが確認することができた。
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今後の研究の推進方策 |
大気突入機後流は渦を含む複雑な流れ場となっており、発光強度において分布を持つことが予想される。そのため、模型背面からの赤外域発光強度スペクトル分布計測のための集光系移動装置の設計を実施する。本移動装置を用いることで模型背面からの赤外域発光強度スペクトル分布計測に取り組む。その際、計測位置を正確にアライメントすることが必要となる。そのため、ファイバー先端から赤外光を発光するアライメントシステムも併せて検討する。また2016年度に得られた衝撃波モードにおける低速域赤外スペクトル計測結果を用いて二酸化炭素分子解離過程モデルを組み込んだ輻射連成数値流体解析コードの作成に取り組むとともに、今後得られる宇宙機模型背面からの輻射スペクトル計測結果とを融合することによって赤外域輻射を伴う大気突入機背後の流れ場モデルの構築を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は2017年1月1日から内閣府に出向したため、当初予定していた学会への参加ができなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
現時点では2017年末まで内閣府へ出向の予定であるが、出向より戻り次第速やかにに模型背面からの赤外域発光強度スペクトル分布計測のための集光系移動装置の設計を実施する。大気突入機後流は渦を含む複雑な流れ場となっており、発光強度において分布を持つことが予想される。そのため、本移動装置を用いることで模型背面からの赤外域発光強度スペクトル分布計測に取り組む。その際、計測位置を正確にアライメントすることが必要となる。そのため、ファイバー先端から赤外光を発光するアライメントシステムも併せて検討する。
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