研究課題/領域番号 |
16K06901
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研究機関 | 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構 |
研究代表者 |
名取 通弘 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 名誉教授 (00013722)
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研究分担者 |
石村 康生 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (10333626)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 構造・材料 / 宇宙構造物システム / 構造物の構築 / 展開構造モジュール |
研究実績の概要 |
本研究は、均質な展開モジュールからなる宇宙構造物システムの構築において、(1) 組立構築に適合した展開膜面モジュールの検討、(2) モジュール間結合部の検討、(3) 構築過程の検討、および (4) 構築途中での形態変化の構築過程に及ぼす影響の評価を行って、組立構築と展開構築とを組み合わせた新たな構築のシナリオを提示しようとするものである。構築の初期形態はそれらが輸送系ロケット内に積み重ねられていわば輪切りの状態で収納されている形態として、それからモジュール間結合部に装着された比較的単純な組立構築の機構によりモジュール自身を移動させて、直線状あるいは円弧状の中間形態に移行させる。さらにその中間形態から最終的に平面状に広がった所要の最終形態にモジュールを移動させて、構築の完了となる。中間形態はいわばオープンな形態であり、最終形態は構造物システムとして剛性など様々な観点から閉じた形態であることが望ましい。そのような一連の組立構築の過程のいづれかの時点に展開構築を含ませることになる。 昨年度(平成28年度)は、それら全体の構築過程に対応しうる展開膜面モジュールの検討を行った。展開の容易さとモジュール間結合部の収納性を考慮して、組紐被覆テープブームおよびらせん折り膜面を用いたモジュールの有用性を確認した。また、輸送系ロケットの打ち上げ荷重にどのように対応するか、そのために追加するハードウエアを全体の構造物システム構築への利用可能かについても基本的な検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、モジュール間結合部の検討および設計と試作を昨年度(平成28年度)、モジュールの概念設計を平成29年度に予定したが、結合部のモジュール内への収納性に結合部の小型化や軽量化などにおいて様々な問題があり、それらを解決可能なモジュールの検討と概念設計を先行させた。結果的に29年度の計画と28年度の計画を振り替えることとなり、29年度にある程度のしわ寄せが生じる可能性があるが、最終的には当初計画の実現を予定しうるものと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
前項のような研究項目の前後があるものの、最終的には計画通りの実施を予定している。すなわち、今後は、初期形態から中間形態をへて最終形態に至るまでの宇宙構造物システム構築のシナリオにおいて、どのように組立構築と展開構築とを組み入れたら効率的な構築が可能になるかについて、基本的な研究を実施する。初期形態から中間形態の移行に対応したモジュール間結合部の概念モデルの設計・試作・動作試験を実施し、さらにその結合部に中間形態から最終形態へ移行させるための機能を付加することの検討を行い、それらをもとにして、構築の全過程において最終的に有効なモジュール間結合部を設計・試作する。同時に、展開膜面モジュールの一つを試作して、その展開試験を実施する。 モジュール間結合部を組み込んだ展開膜面モジュールにより、初期形態から最終形態に至るまでの構築の全過程におけるそれらの動作確認試験を行う。特にそのような試験により展開膜面モジュールの展開中や展開直後にモジュールを支持しているモジュール間結合部に展開構築がどのような影響を与えるかを明らかにする。 動作確認試験は必要最小限の個数のモデルからなる試験に限定されるが、多数のモジュールによる本研究の構築方法の実現性および有効性は、数値シミュレーションに より明らかにする。 本研究で扱う構築方法によれば、近未来に予想される30mから100m級のアンテナ構造物はもちろん将来の太陽発電衛星などの数kmクラスの大規模構造物の構築も可能である。そのような巨大構造物では、軌道上での姿勢は空気抵抗や重力、あるいは太陽輻射圧などの宇宙空間での微小環境外力により大きな影響を受ける。そのような外力により、本研究の構築過程がどのような影響を受けるかについての基本的な検討をシミュレーショによって明らかにすることも試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
11. 現在までの進捗状況の項で述べたように、研究の進展に伴い、昨年度(平成28年度)実施予定であったモジュール間結合部の検討および設計・試作と次年度(平成29年度)に実施予定の展開膜面モジュールの概念設計・試作とを振り替えざるを得なかったため。モジュール間結合部は概念モデルの範囲内の製作で費用はあまり生じないが、モジュール自体は割合精度の高いモデルの設計・製作となるため外注を予定している。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度(平成29年度)で予定している展開膜面モジュールの設計・製作に、次年度予算と合わせて使用する。
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