研究課題/領域番号 |
16K06902
|
研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
戸田 勝善 東京海洋大学, 学術研究院, 教授 (70262342)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 適応カルマンフィルタ / H∞フィルタ / スイッチングフィルタ / カルマンフィルタの漸近安定性 / スイッチングH∞制御 |
研究実績の概要 |
29年度においては,まず,28年度に開発した適応動揺推定手法について,さらに性能を向上させるための安定性解析手法を考案した.適応ゲインの採用の可否をこの解析手法に基づいて実施することで,より高性能な推定が可能となることを単振動モデルによる推定シミュレーションにより確認した.また,この安定性解析手法は,時変離散カルマンフィルタがすべてのサンプリング時刻において漸近安定性を有するための十分条件に基づくものである.本研究で示した十分条件は,初期誤差共分散行列の正定性および単調性,さらにシステム遷移行列の正則性による.この条件は,既往の理論研究では示されていなかったシステムが可安定ではない単位円上の極を有する場合の安定性条件として,重要な意義がある.以上の成果は,IEEE Transactions on Industrial Electronicsへregular paperとして投稿した. つぎに,動揺周波数が変化する場合の動揺ベースマニピュレータの制御手法として,複数周波数に対応したH∞制御器を切り替えることによるアルゴリズムを検討した.現時点では,周波数の変化が既知である場合には,本アルゴリズムは効果的であることをシミュレーションにより確認した.一方,周波数推定には当初FFTを利用する予定であったが,提案した適応動揺推定手法を改良することにより,周波数推定も行える可能性があるため,現在検討している.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず,適応動揺推定のための適応カルマンフィルタおよびH∞フィルタを選択的にスイッチングする手法については,予定どおり研究が実施できた.さらに,当初予期していなかった,本研究の副産物として,既往の理論研究では示されていなかったシステムが可安定ではない単位円上の極を有する場合にも利用できる安定性条件が得られた.この点は,本研究のみならずより一般的な重要性を有するものである. また,動揺周波数の変動に対する適応制御手法についても予定どおり検討を行うことができた. しかしながら,安定性の条件を導くために相当な時間を要したため,ハードウェアの更新の方が予定よりも遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
まず,現在検討中の適応動揺推定手法の改良による,動揺周波数を推定する手法についてシミュレーションによる評価を行い,アルゴリズムの調整およびFFTによる手法との比較を行う予定である.つぎに,これまでの提案してきた適応推定手法および適応制御手法を組み合わせた総合的評価をシミュレーションを行う. さらに,ハードウェアの更新後には,これらの各手法単体および組み合わせた手法に対する実験的評価を行う.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初,ハードウェアの更新にあたって,Labviewトレーニングプログラムを有償で受講する予定であったが,当該費用はライセンス費用に含まれていることが後に判明したために節約することができた.次年度では,その費用をさらなるハードウェアの改良を行い,比較実験が行えるよう,28年度に購入した物とは別のジャイロセンサの購入を予定している.
|