30年度においては,検討していた適応動揺推定手法を確立し,シミュレーションのみならずモデル実験による検証を行い,その有効性を確認した.さらに,本研究の成果について,IEEE Transactions on Industrial Electronicsへregular paperとして投稿し,掲載可となった.論文タイトルは”Adaptive Algorithms of Tuning and Switching Kalman and H∞ Filters and Their Application to Estimation of Ship Oscillation with Time-Varying Frequencies"であり,early accessバージョンについてはインターネット上で閲覧可能である. 本研究で開発した手法は,未知の時間変動をする線形システムに対して利用可能なフィルタリング手法であり,非線形システムに利用可能な場合もある.フィルタリング手法のポイントは,イノベーションのパワーに基づいてゲインを適応化した適応カルマンフィルタと通常のH∞フィルタをそれぞれのイノベーションのパワーの比を基準として,スイッチングする点にある.これにより,ガウス性ノイズに効果的なカルマンフィルタと確定的なノイズやシステムの不確定性にロバストなH∞フィルタの利点を生かすことが可能である. 本手法の有効性を検証するために周波数が時間変動する単振動システムおよび海洋波による船舶の動揺システムを対象として,ジャイロセンサにより動揺角を推定する問題を設定し,シミュレーションにより本手法の有効性を確認した.さらに,船舶の動揺システムについては,動揺を再現できる実験装置を用いて,比較的安価なジャイロセンサに本手法を適用して,比較的ノイズが大きい環境においても有効な推定が可能であることを確認した.
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