研究課題/領域番号 |
16K06917
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
向瀬 紀一郎 富山高等専門学校, 商船学科, 准教授 (60408721)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 船舶工学 / 三次元再構成 / 風洞実験 |
研究実績の概要 |
日本経済を支える海上輸送のエネルギー効率を向上させること,また荒天時の船舶の安全性を向上させることを目的とし,船舶の空力特性の研究に取り組んでいる。その研究のための風洞実験や数値流体シミュレーションにおいて必要となる,運用中の船舶の上部構造物の精密な3次元形状データを,小型無人航空機(ドローン)の援用および3次元再構成技術の応用によって,低コストかつ短期間で制作する手法の構築を図っている。この手法による3次元モデリングと風洞実験や数値流体シミュレーションを効率的に繰り返し,竣工後の船舶の空力特性を小規模な改修によって効果的に改善する手段を探索し,造船業の新しいビジネスのシーズとして提案していくことを目指している。 富山高専の運用している練習船「若潮丸」(全長53.59m,幅10m)の周囲の海上で,デジタルビデオカメラを搭載した小型無人航空機(4ローター式マルチコプター型)を複数回にわたって飛行させ,さまざまな視点から船体を撮影した動画データからをコンピュータで解析し,3次元再構成技術によって,甲板上の機器や上部構造物の立体形状をコンピュータ内に再現した。また,このデータに基づき3次元プリンタによって作成される模型の空力特性を測定するため,新しい風洞実験装置(全長10m,測定部の幅900mm,高さ900mm)の制作に取り組んだ。風洞内に備えられる整流器の位置と測定部における風速分布との関係を調べるための実験を繰り返し,その整流器の最適な位置を明らかにした。また,風洞の一端に備えられる送風器の誘導電動機に供給する3相交流電力の周波数と測定部における風速との関係を調べるための実験も繰り返し,新しく制作した風洞実験装置の性能を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者は平成28年4月より,弓削商船高等専門学校から富山高等専門学校へ異動した。当初の予定では弓削商船高等専門学校の練習船「弓削丸」を対象として研究を行う計画であったが,現在,富山高等専門学校の練習船「若潮丸」を対象として研究を進めている。小型無人航空機による画像データの収集と三次元再構成は順調に進んでおり,練習船「若潮丸」の三次元形状を再現することに成功している。しかし,富山高等専門学校の商船学科の風洞実験装置は利用できない状態であったため,現在,その装置を新しく制作した段階であり,まだ風洞実験の本格的な実施には至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
研究代表者は平成28年4月より,弓削商船高等専門学校から富山高等専門学校へ異動した。富山高等専門学校の商船学科の風洞実験装置は利用できない状態であったため,平成29年度より新しい風洞実験装置の制作に取り組んだ。 新たに制作した風洞は,エッフェル型(開放型)の,全長10メートルのものである。構造は主に木材で組み立てられるものとした。風洞の上流部分においては,直径710ミリメートルの大型送風機が備えられ, 200ボルトの三相交流によって駆動されるものとした。送風機の風量は,三相交流インバータによって制御されるものとした。風洞の中流部分においては,ハニカム構造の整流器によって気流が整えられるものとした。風洞の下流部分においては,三分力計によって模型に作用する揚力および抗力の大きさが測定されるものとした。平成30年度末時点で,新しい風洞は完成しその性能評価も完了した。今後,船体模型を用いた測定を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者は平成28年4月より,弓削商船高等専門学校から富山高等専門学校へ異動した。現在,富山高等専門学校において新しい風洞実験装置を制作した段階であり,3次元造型機による模型の出力やそれを用いた風洞実験の実施には至っていない。そのため,3次元造型機の消耗品費として計上していた予算は,未使用である。 新しい風洞実験装置は平成30年度末に完成した。今後,そのチャンバーの形状に応じた船体模型を3次元造型機によって出力し,その空力特性を測定する計画である。3次元造型機による模型の制作に際して,必要な消耗品費を支出する予定である。
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