日本経済を支える海上輸送のエネルギー効率を向上させること,また荒天時の船舶の安全性を向上させることを目的とし,船舶の空力特性の研究に取り組んだ。その研究のための風洞実験や数値流体シミュレーションにおいて必要となる,運用中の船舶の上部構造物の精密な3次元形状データを,小型無人航空機(ドローン)の援用および3次元再構成技術の応用によって,低コストかつ短期間で制作する手法の構築を図った。この手法による3次元モデリングと風洞実験や数値流体シミュレーションを効率的に繰り返し,竣工後の船舶の空力特性を小規模な改修によって効果的に改善する手段を探索し,造船業の新しいビジネスのシーズとして提案していくことを目指した。 富山高専の運用している練習船「若潮丸」(全長53.59m,幅10m)の周囲の海上で,デジタルビデオカメラを搭載した小型無人航空機(4ローター式マルチコプター型)を複数回にわたって飛行させ,さまざまな視点から船体を撮影した動画データからをコンピュータで解析し,3次元再構成技術によって,甲板上の機器や上部構造物の立体形状をコンピュータ内に再現した。この実験を通じて,海上の船体の3次元モデリングのための効率的な空撮方法を明らかにした。また,新しい風洞実験装置(全長10m,測定部の幅900mm,高さ900mm)の制作に取り組んだ。その風洞実験装置を用いて,船体模型に作用する抗力と風速との関係を定量的に測定することに成功した。
|