研究課題/領域番号 |
16K06927
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
藤原 惠子 山口大学, 大学院創成科学研究科, 助手 (50253175)
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研究分担者 |
中塚 晃彦 山口大学, 大学院創成科学研究科, 准教授 (80294651)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | Csイオン / Na-GTS型チタノシリケート / XRD / イオン交換 / Smイオン |
研究実績の概要 |
ゼオライトに代表されるようにマイクロポーラス結晶は古くからイオン交換体として利用されてきた。これまで放射性廃棄物処理材としての利用を目的とし、「Na-GTS型チタノシリケート化合物」に着目して様々な放射性元素のイオン交換特性について研究してきた。今回は、福島第一原発事故における汚染水に含まれる放射性元素のうち、半減期の長いセシウム(Cs-135:半減期約300万年、Cs-137:半減期約30年)のイオン交換特性について検討した。 合成したNa-GTS 0.5 gに塩化セシウム水溶液(0.01≦CCs≦1.0 M)25 mlを加え、振とう処理を25 ℃で24時間行った。得られたCs交換体において、粉末X線回折(XRD)法により構造評価を行った。上澄み溶液の原子吸光分析によってCs交換体[Na4(1- x)Cs4xTi4Si3O16・yH2O]の組成を決定した(xを交換率と定義した)。また、TG-DTA (熱重量測定-示差熱分析)を用いて含水量を測定した。濃度の増加に伴って、イオン交換率xが増加していき、CCs = 1.0 Mのときx = 0.71のCs+交換体を得た。Csイオン交換率(x)の増加に伴い、菱面体晶系として求めた格子定数aおよびαは増加し、その結果、単位格子体積Vは増加した。これはイオン半径のより大きいCs+がNa+と交換した結果である。Sr-GTSの単結晶X線構造解析によって報告された交換性陽イオン席(4e及び6g)がCs+の可能な占有席とし、いくつかの占有モデルを仮定してXRDパターンをシミュレーションした。実測のXRDパターンと比較した結果、Cs+が6g席に分布していることが示唆された。合成したNa-GTS 0.5 gに塩化サマリウム水溶液(0.01≦CSm≦0.5M)25 mlを加え、振とう処理温度を60 ℃で24時間行ったが、25℃の時と比べて交換率に大きな違いはなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福島第一原発事故における汚染水に含まれる放射性元素のうち、半減期の長い元素は、Sm(Sm-151:半減期約87年)のほか、セシウム(Cs-135:半減期約300万年、Cs-137:半減期約30年)、ニッケル(Ni-63:半減期約100年)が含まれていることが報告されている。塩化セシウムは、室温で容易にイオン交換することがわかった。ニッケルについても塩化ニッケルで研究を進めることが可能である。
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今後の研究の推進方策 |
福島第一原発事故における汚染水に含まれる放射性元素のうち、半減期の長いニッケル(Ni-63:半減期約100年)のイオン交換特性について検討する。 塩化ニッケル水溶液の濃度および処理温度などを系統的に変化させて試料を調製し、イオン交換種による特性の違いを明らかにする。調製したGTS型チタノシリゲートの陽イオン交換体について、原子吸光分析法、FT-IR、XRDなどを用いた分析、評価を行なう。TG-DTA装置を用いて、脱水温度、含水量及び、チタノシリケートの骨格構造の安定性などについても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
TG-DTA装置の制御用コンピューターの買い替え(システムインストールを含む)を予定していたが、修理で対応できたため未使用額が生じた。 繰越した39万円は、X線発生装置消耗品として20万円及び国内学会参加の旅費として19万円に使用する見込みである。
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