研究課題/領域番号 |
16K06929
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
三木 一 九州大学, 工学研究院, 准教授 (10706386)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 超微量粉末電極 / 電気化学 / ミネラルプロセッシング / 電位制御 / 酸化還元反応 / 電解処理 / 選択酸化 / 浮遊選別 |
研究実績の概要 |
超微量粉末電極を利用した新規電気化学手法のミネラルプロセッシングへの応用を研究の目的としている。平成28年度においては、申請者の考案した超微量粉末電極の最適条件を検討するため、種々の条件において実験を行い、#800の研磨紙での湿式研磨が簡便かつ最も再現性の良い粉末試料が得られることを見出した。種々の硫化鉱物において粉末電極を作成し、黄銅鉱、黄鉄鉱、四面ヒ銅鉱、硫砒銅鉱などで従来法と比較して分解能の非常に高い良い結果が得られ、酸化還元電位における各反応についてより定量的に検討することが可能となった。 また、電気化学反応の実操業への応用として、黄銅鉱と輝水鉛鉱の相互分離のための電解処理の検討を行い、電解処理の後の浮遊選別により、輝水鉛鉱を浮鉱、黄銅鉱を沈鉱としての分離可能性を示唆する結果を得た。XPS表面分析および電気化学測定により、この結果は黄銅鉱がより酸化されやすく、鉄や銅の酸化物が黄銅鉱表面を覆うためによる親水化が原因となることを見出した。 より詳細な反応を検討するため、リング-ディスク回転電極による実験のセットアップを行った。本セットアップにより、固相から溶出してきたイオンの挙動についても測定できることとなる。また、研究実施計画にあるように、電位制御プログラムとシステムを作成し、評価し、このシステムを利用した電解槽の設計と開発を行った。電位制御プログラムはLabviewソフトを用い、8チャンネル同時の制御を可能とした。電位制御のための電解槽は、電解式及び空気吹き込み式の2種類を開発し、どちらも大変良い電位制御ができることを明らかにした。先に述べた回転電極を組み合わせることによりより詳細な検討が可能となっている。この電解槽を用いて各種検討を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成28年度の研究実施計画に沿って研究は進められ、研究計画の内容に沿った研究成果が得られている。超微量粉末電極を用いて各種試料の電気化学的共同の評価を行い、最適な条件、簡便かつ再現性の高い実験手法が確立され、様々な試料において実験を行ったことで従来より詳細で定量的な成果が得られ、これらの結果は論文により発表された。また、並行して電位制御プログラム、電解槽の開発を行い、これらについても問題なく開発することができ、様々な条件できわめて正確に酸化還元電位を制御できる結果を得ている。 これら研究実施計画に沿った成果に加え、本来次年度の課題となる、電解のミネラルプロセッシングへの応用として、黄銅鉱-輝水鉛鉱の電解による分離の検討を行い、黄銅鉱の選択酸化に基づく浮選分離の可能性を示唆してきている。これらの結果の検討においては、電気化学的な分析以外に、XPSやSEM-EDXによる表面分析、接触角測定など多種多様な分析方法を用いてより系統的に検討を行ってきた。これらの結果は、いくつかの国際学会などで公表されてきた。 また、電位制御の方法として、計画にあった電解法のみならず、プログラム制御による空気吹き込み式の電位制御法の開発にも成功してきている。この方法により、直接に電気を流すことによる電位制御と比較検討を行うことができ、また電流の流れにくい溶液中においても電位制御が可能となった。これらの結果により、より系統的な電位制御によるミネラルプロセッシングへの応用が可能となるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
超微量粉末電極においては、より多種多様な鉱物の検討、また沈殿物や混合物がある場合などに対しても応用ができることについてより詳細に検討していく予定である。回転電極システムと組み合わせることにより、固相からの拡散物質の挙動に対しても検討する予定である。具体的には、硫砒鉄鉱、方鉛鉱などほかの硫化鉱物、また一般に電流が流れにくく電気化学測定の困難であった閃亜鉛鉱や酸化物、混合物の分析として、各種金属精鉱や鉱石、廃水処理に伴い生成した各種沈殿物についても検討を行う。 開発した、電解及び空気吹き込み式による電位制御槽を用いて、ミネラルプロセッシング、すなわち浸出系、浮遊選別などに応用し、また精密な制御による各種反応の制御や解明に関する研究、鉄酸化および還元菌の効率的な培養や利用により、鉱山廃水処理、有価金属の回収、有毒金属の無害化など広く取り扱っていく予定である。
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