超微量粉末電極を利用した新規電気化学手法のミネラルプロセッシングへの応用を研究の目的としている。これまで、申請者の考案した超微量粉末電極の最適条件を検討し、簡便に各種鉱物の酸化還元条件を評価することができた。平成30年度(最終年度)においては、前年度において評価した銅鉱物、モリブデン鉱物、含ヒ素鉱物について、浮遊選別における分離について検討を行った。その結果、環境負荷が低く、経済的な酸化還元剤の添加を提案し、これらの添加により、従来難しかった分離が極めて効率的に行えることを見出した。添加剤としては、還元剤として亜硫酸ナトリウム、酸化剤として過酸化水素を提案した。これらの添加により、鉄を含む銅鉱物を選択的に酸化することができ、モリブデン鉱物、含ヒ素鉱物を選択的に浮遊回収できた。これらの結果は、論文、国際学会において発表してきている。 また、これらの結果をもとに、精密に電位制御を行うことのできる反応槽を作成し、各種反応について詳細な検討を行った。平成30年度(最終年度)においては、直接電解による酸化還元反応の制御だけではなく、酸素および窒素吹込みのソレノイドスイッチによる制御を利用し、非電解式の反応制御槽を考案し、作成した。これらの装置は、電解による電位の偏り、電極上での過剰な酸化還元反応を防ぐことができ、かつ白金などの高価な電極を使用する必要がなく、浸出や排水処理などの現場に応用できるものと考えられた。本研究により、鉱物処理における革新的な分離方法、新しい添加物を提案でき、また、安価な電位制御法による効率的な湿式精錬・排水処理への応用を提案することができた。
|