研究実績の概要 |
平成29年度においては、カンボジアの南西部地域において花崗岩類の調査を行った。Mae Ping断層を境に南西部とし、Dar地域、Phnom Aural(North、South)、Phnom Basset、Phnom Tamao、Chumkiri地域およびKirivong地域の花崗岩類の調査を行った。偏光顕微鏡観察,帯磁率測定、全岩および鉱物化学組成分析、Sr-Nd-Pb同位体組成分析を行うとともに、北東部との比較を行った。ほとんどの花崗岩類は狭義の花崗岩に分類され、peraluminousであり、Kirivong地域およびPhnom Tamaoを除いてIタイプに分類され、Kirivong地域およびPhnom TamaoはAタイプに分類された。REEパターンにおいて、すべての地域の花崗岩類でEuの負の異常が見られた。SEM-EDX分析の結果、各花崗岩類中の黒雲母のMg/(Mg+Fe)モル比は0.15~0.3程度の低い値を示した。全Al含有量は2.3~3.4の値を示した。Rb-Sr同位体分析の結果、Kirivong地域以外の花崗岩類は、ほぼ一つのアイソクロン上に乗り、200~180Maの生成年代が求められた。それに対し、Kirivong地域に対しては71Maの年代が得られた。これらの年代を用いて補正を行ったNd-Sr同位体分析の結果、南西部の花崗岩類の生成にはマントル物質に加え、大陸地殻物質の寄与が推定された。 上記花崗岩類の調査に加え、砒鉄鉱とサフロ鉱に対して500および600℃、1kbの条件下で鉱物と1M/l(Ni,Mg,Co,Zn,Fe,Mn)Cl2水溶液間におけるイオン交換実験を行った。その結果を分配係数ーイオン半径図にプロットした結果、両鉱物はほぼ同様な分配挙動を示し、Co付近が最適イオン半径であり、Znは負の分配異常を、Niは正の分配異常を示すことが明らかになった。
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