研究課題/領域番号 |
16K06932
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
香村 一夫 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10434383)
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研究分担者 |
山田 正人 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 室長 (30280762)
大和田 秀二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (60169084)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 最終処分場 / レアメタル / メタル濃集ゾーン / 比抵抗法 / IP法 / 物理的濃縮技術 / 重液選鉱 / 浮遊選鉱 |
研究実績の概要 |
近年需要が多い反面、供給に不安要素の高い希少金属類に焦点をあてて、「家電リサイクル法が制定される前に埋立終了した最終処分場が都市鉱山として利用できるか」を種々の局面から検討している。平成29年度は、「埋立層内メタル濃集ゾーン把握における電気探査手法」および「最終処分場の掘削埋立物中からレアメタルを物理的に濃縮させる方法」を詳細に検討した。その結果について以下に記す。 1)レアメタル濃集ゾーン把握に対する探査手法の検討においては、わが国に多く存在する谷埋め廃棄物埋立層のメタル濃集ゾーンを対象として、測線組み合わせ等を変えながら探査手法の確立をめざした.フィールド実験では比抵抗法と強制分極法(IP法)を組み合わせて,比抵抗・充電率プロファイルを取得した.室内実験では,前述プロファイルを参考に掘削採取した試料の比抵抗・充電率・PFE値を測定した.さらに,試料中の各種金属濃度を分析した.それらを検討した結果、「IP法によるプロファイルと各コア試料のPFE値」、「Fe濃度とPFE値」、「Fe濃度と数種類のレアメタルの濃度」に高い相関が得られた。以上より、IP法による探査プロファイルから、レアメタル濃集ゾーンの把握ができることが示された。2)レアメタルの物理的濃縮に関する検討においては、1)の処分場において掘削・採取した廃棄物から各種メタル類を効率的に濃縮するための技術として、「重液選鉱」と「浮遊選鉱」を試みた。前者では、重液の比重3.0の場合にメタル類の濃縮が顕著であった。後者では、大部分のメタル類が、浮選後に濃縮していることが確認された。3)賦存するメタル類の経済的価値について、前述の処分場で得られた選鉱前・選鉱後のメタル濃度から品位率(山末ほか、2008)を算出し、資源的な有用性を評価した結果、この処分場の埋立物ではレアメタルの資源的価値はそれ程ないことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した研究フローに沿って進んでいる。メタル濃集ゾーンを特定する探査法として、IP法が谷埋め最終処分場でも有効であることが確認できたことは大きな成果である。なぜなら、わが国の最終処分場の大部分がこの型に属するからである。一方、海面や内水面の埋立て処分場と異なり、層内は不飽和であることから、随所に宙水が賦存する。この宙水の存在が探査データの解釈にほとんど影響を及ぼさないことが判明した。また、IP法は、過去に自然の硫化鉄鉱床の探査で多く用いられた実績があり、内部が嫌気的である処分場埋立層のFe濃集ゾーンの把握にも有効と考えられる。さらに、Feとある種のレアメタルが層内で共存することは、レアメタルの探査にIP法が利用可能という裏付けともなる。このように、本課題に対してIP法が有効であることが示された。今後はいかに精度をあげるかである。 また、回収埋立物から経済的にレアメタルを抽出する物理的な処理として、平成28年度に重液選別が利用可能であることを報告した。本年度は、浮遊選鉱単独、重液選鉱と浮遊選鉱の組み合わせ等の手法で、掘削廃棄物中のメタル濃縮について検討した。浮遊選鉱はかつて硫化鉱物の選別に用いられており、埋立廃棄物中のメタル類の分離にも適することが期待され、妥当な結果も得られている。ただ、未だ基礎的な実験であり、使用する薬剤の選択や溶液のpH 等の最適条件抽出が今後の課題として残る。また、バイオリーチング等、新たな視点からの検討も今後試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本課題は平成30年が最終年度にあたり、次の項目を実施する予定である。 これまで培ってきた探査や濃縮の方法論が適切であることの再検証を試みる。研究代表者は国内の多くの処分場において環境管理に関する研究に携わってきた。その中で、都市鉱山として相対的に価値の高いと推定された福井県の処分場において、本研究で組み立てた探査と選鉱フローを適用し、各部の詰めを行う。また、大学実験室にある廃棄物埋立層モデル土槽を利用して、探査に関する理論的な検証を実施する。 以上を確認したうえで、最終処分場埋立層に賦存する有用希少金属の総合的な評価を実施するとともに、その開発フローを作成する。一方、このような「Landfill Mining」に関する研究は海外では広く行われているが、わが国では少ない。この研究成果を踏まえて、international journalへと論文投稿をしていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験試薬の入荷が遅れ、翌年度に繰り越すこととなった。予定通り、平成30年度に実験試薬を購入する。
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