研究課題/領域番号 |
16K06933
|
研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
三枝 幹雄 茨城大学, 工学部, 教授 (10292476)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | ミリ波帯高速スイッチ / 核融合 / 電子サイクロトロン波帯 / 加熱電流駆動 / 固有振動 / リング共振機 / 振動発生機 |
研究実績の概要 |
本研究で開発を行うミリ波帯高速スイッチは、最終的に核融合炉用電子サイクロトロン波帯加熱電流駆動装置に組み込まれ、リング状コルゲート導波管と2枚の誘電体ハーフミラーからなるリング共振器を用いることで、大電力ミリ波の高速切替えが行なえる。その原理は、リング共振器内の反射板を高速振動させることでリング共振器の周長を変化させて共振周波数を高速に変調することで出力を高速に切り替える。平成28年度は原理の実証として、小型振動試験機2台を用いて、リング共振器の2枚の反射鏡を同期して振動させ、600Hzまで切り替え可能であることを確認した。平成29年度は、本来の目標である3 kHz以上の高速切り替えを目指し、反射鏡を固有振動で共振させる構造の検討を行った。まず有限要素法を用いたシミュレーションで、反射鏡の固有振動数および固有振動のモードを確認し、その固有モードの中から切り替えに適したモードを選定し、3 kHz以上の固有振動が得られることを確認した。次に、反射鏡を振動させる方法の検討を行い、ピン状の金属で反射鏡の裏から押す構造とし、押す点の数と位置の最適化を行なった。その結果、反射鏡の裏面を楕円状に削り込み、その内側で周辺から3 mmの位置を4個のピンで押す方法がもっとも固有振動の振幅を大きくできる事がわかった。次に反射鏡を設計し、SUS304に銅メッキした反射鏡を制作した。次にその反射鏡を小型振動試験機で振動させ、固有振動周波数がほぼシミュレーション通りであることを確認した。 反射鏡の検討と並行してリング共振器本体の設計を行った。リング共振機の周長を従来の0.65 mから1.2 mに修正することで、共振周波数の間隔を従来の460 MHzから250 MHzに修正し、温度制御による共振周波数制御機能(4 MHz/K)を付加した。それらの成果を電気学会、プラズマ・核融合学会年会で発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
市販の振動試験用振動発生機を用いた試験の結果を反映し、固有振動を用いた従来にないユニークなミリ波対高速スイッチの開発を目指し、数値計算によるシミュレーションを終え、振動実験を開始し、スイッチ本体のリング共振機の設計を終え、最終年度に完成させ試験をするスケジュール通りに進んでいるから。
|
今後の研究の推進方策 |
平成30年度は5月までに高速スイッチの最終設計を詰め、6月に発注、7月に製作を行い、8月に低電力試験による高速切り替え特性の評価を行う。それらの結果をまとめて9月にイタリアで開催される国際会議SOFT2018にて研究成果を発表し、10月、11月にさらなる低電力試験を行ったのち、11月には電気学会東京支部茨城支所研究発表会、12月にはプラズマ・核融合学会年会にて研究発表を行う。また、9月には英文学術論文誌に論文を投稿する。大電力試験は、共同研究先の量研と調整して、年度にはこだわらずジャイロトロンが使用可能な時期に行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では平成28年度に高速スイッチを設計し、平成29年度に製作して高速切り替え試験を行うはずであったが、平成28年度に従来の周波数変調型切り替え器と小型振動発生器を用いた予備実験が行えたことで研究が進展し、強制振動による切り替え周波数の上限が600 Hz程度であることが判明した。平成29年度は本来の目的である3 kHz以上の切り替えを目指し、市販の有限要素法解析ソフトウェアFEMTETを用いて固有振動を用いた高速切り替えスイッチのシミュレーションを行うと同時に、新型高速スイッチの設計を行った。そのため、研究としては当初提案したスイッチよりも進化した段階だが、新型装置の製作時期が平成29年度から平成30年度に延期され、高速スイッチの製作予算もFEMTETの使用料金以外は平成30年度に繰り越されることになった。
|