研究課題/領域番号 |
16K06938
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
糟谷 直宏 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (20390635)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | プラズマ・核融合 / 磁場閉じ込め / 多次元構造 / 過渡応答 / トーラス / MHD / 数値診断 |
研究実績の概要 |
本研究はトロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果の定量化を目的とする。トーラスプラズマの輸送現象を理解するためには、プラズマ中の空間的に局在した構造の解明が重要である。様々な局在構造がダイナミクスを伴って存在し、空間多次元構造を持ち得る。本研究では多次元構造のうち、乱流構造から自律的に形成されるものと磁場配位に起因するものの両者を対象とする。効果が顕在化する過渡的な状況の非線形シミュレーションを通じて、輸送への寄与とダイナミクスを明らかにする。 本年度は自律的に形成される構造のダイナミクスを重点課題として研究を行った。3場簡約MHD方程式系を用いてドリフト交換型モード乱流を解析し、モード間非線形結合の空間的分布と圧力分布の発展の関係を探った。ここではヘリカルプラズマにおける各有理面を中心に径方向に幅を持って分布する不安定共鳴モードと非線形励起モード群が存在する系を考える。これら多くのモードからの寄与の総和で非線形飽和レベルが保たれる。周期的に変化する空間的に局在した圧力ソース項の変調を加え、特徴的な応答の抽出を行った。変調周期について条件付き平均をとってもなお時間変化の中にアバランチ的な緩和が現れる。その揺動スケールの時間変動に関しては、それぞれの場所で異なる、共鳴モードとの関係が強いことがエネルギー時系列の相関解析からわかった。非線形性による自己維持機構が働く中で、磁場分布に依存する不安定な単一モードがプラズマ応答を主導している様相を明確にすることができた。 また、磁場配位に起因する構造のダイナミクスを探る準備として、3次元磁場配位を取り込んだMHDコードの計算実行環境整備も行った。このように本研究で対象とする自律的および磁場配位由来の2種類のプラズマ構造形成について確実に研究を進展させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、2種類のグローバルMHDシミュレーションを通じて、トロイダル磁場閉じ込めプラズマにおいて発現する空間3次元構造(多次元構造)が輸送にもたらす効果を定量化することにある。本年度は簡約MHDモデルを用いた3次元グローバルシミュレーションにより、半径方向に分布するモード間の非線形結合機構を解析することで、動的な輸送機構を示すことができた。さらに3次元形状の解析から、トーラス形状によるバルーニング性と相まって熱輸送に空間構造を伴うことの示唆を得ることができた。また、詳細な実磁場配位の効果を評価するためのシミュレーションコード整備も開始している。よって、研究開始が年度途中であったことを鑑みて初年目は順調に進展したといえる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は簡約MHDコードを用いて、プラズマ乱流の動的応答について物理的理解を進展させることができた。その理解をさらに深めるために、平均操作によって残る熱流束成分と確率的に生じる成分の関係について考察を行うことで、空間局在構造の役割の理解を図る。また、本年度準備を行った3次元磁場配位を導入可能なMHDコードの環境整備を引き続き行う。初期条件として様々な平衡磁場分布を与えられるようにし、パラメータスキャンを行うことで、磁場配位からもたらされる不安定モード構造の違いが非線形的に分布変化に与える効果の定量的評価を開始する。そしてMHD不安定性によって引き起こされる圧力緩和ダイナミクスの分類を行い、、3次元的な変形機構の理解を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品として購入を予定していたシミュレーションデータ保存用のハードディスクは、現有物品の修理により代替えすることができた。また、予定していた出張旅費や消耗品も別経費にて支出することができた。そのため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の計画ではシミュレーションコードの開発とシミュレーション実行が主となる。開発に使用する計算サーバの購入を予定している。
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