研究課題
本研究は,極限的に効率の高い核融合炉心プラズマを実現する可能性を有する磁場反転配位(Field-Reversed Configuration:FRC)において,中性粒子ビーム入射(Neutral Beam Injection:NBI)を補完する加熱・電流駆動法として,低周波波動印加の励起とその伝播特性を観測し,加熱特性などを検証することを目的としている。平成28年度までにアップグレードを完了したFRC衝突・合体実験装置FAT-CMは,2つの逆磁場シータピンチ型FRC生成部を持ち,生成されたFRCを秒速400 - 500kmで閉じ込め部へ移送,衝突合体させることで,捕捉磁束が大きく,高温・高密度なFRCを生成する装置である。平成29年度は,このFAT装置に対して波動印加用のアンテナを設置,前年度に開発した電源を接続して波動励起実験の準備を進めるとともに,印加された波動に対するプラズマの応答を観測するための計測系の立ち上げと移送速度制御のためのパルスコイルの開発を行った。計測装置としては,赤外レーザー干渉計,ボロメータアレイ,内部磁気プローブ,トモグラフィカメラがあり,内部磁気プローブアレイを用いた観測では,衝突合体後のFRCについて反転配位が形成され,また生成部と比較して,約2倍のポロイダル磁束を持つことが確認された。また,昨年度より準備を行っていた2次元軸対象MHDモデルによるFRC生成・移送~衝突合体の全過程にわたるシミュレーションの準備が整い,実験条件の設定や実験結果の評価などにおける強力なツールとなった。
2: おおむね順調に進展している
波動励起実験に向け実験系の準備はおおよそ整った。また,2次元MHDシミュレーションによるFRCの衝突合体の再現も順調に進み,実験条件の決定において強力なツールとなった。また,当初の計画になかった計測系が,共同研究先であるTAE社などの協力により整備された。特に観測を開始したボロメータアレイは,30年度に予定されている波動励起実験における加熱効果の検証において重要なデータとなると考えられる。一方で,予想を超える超アルヴェン速度衝突合体の加熱効果により,合体後のFRCプラズマが大きく膨張することがわかり,閉じ込め部ミラー磁場の増強など,当初の計画にない作業が必要となった。
実験準備は概ね順調であり,本年度中に本研究課題の目標であった波動励起実験とその実験的な評価・検証を終えられると予想される。実験結果の評価については,特に研究分担者である群馬大学の高橋俊樹氏と連携を取り,ハイブリッドシミュレーションによる支援を受ける計画であり,29年度末に検討会を実施,研究遂行における役割分担について確認を行った。また,両研究室より新たに大学院生が研究に参加することも確認された。
29年度の実験において,超アルヴェン速度における衝突合体による加熱効果が予想を上回って大きいという,研究計画全体としてはポジティブな結果が得られた。このため閉じ込めに設計時よりも強いミラー磁場が必要となり,波動印加実験の開始に若干の遅れが生じ,次年度使用額が発生した。予算執行期限後に順調に装置準備は完了しており,30年度に実験およびその評価を予定通り進める計画である。
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Nuclear Fusion
巻: 57 ページ: 076018-1~7
10.1088/1741-4326/aa6dcd
巻: 57 ページ: 116021-1~8
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巻: 58 ページ: 016004-1~14
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