研究課題
本年度は、研究計画に則り以下の3つの課題を実施した。1. これまで開発してきた、2次元ペルチェ素子アレイより構成されるミリ波パワー分布モニターの信号解析法について、得られた信号よりコルゲート導波管内伝搬のモード成分を分析するためのソフトウエアの改良を進めた。それぞれのペルチェ素子の電圧変化より、伝搬モードの強度分布を取得し、それらのデータからモード成分を分析する方法を高精度化した。模擬データを用いたモード分析では、8×8のペルチェ素子信号でも、HE11主モードに加えていくつかの低次不要モードを加えた伝搬波について、少なくとも1対のモード分布モニターの信号をを使用すればすれば、ある条件下で正しくモード分析できることが明らかになった。2. 並行して、ジャイロトロンからの大出力ミリ波を、伝送のためのコルゲート導波管に結合する2枚のミラー系について、フィードバック制御で駆動するため、モーターとエンコーダを用いた機構を試作し、駆動試験を行った。それぞれのミラーについて2軸(水平、垂直)方向にフィードバック制御で駆動できるシステムである。これにより、導波管入り口でのミリ波ビームの入射角を、ミリ波パワー分布モニターの信号解析結果に基づいて制御することができる。3. 現実的なECRHシステムので使用に可能となるように、より高出力のミリ波伝送に対応でき、熱処理能力の高い、より小型のペルチェ素子を調達した。1素子当たり10Wの熱処理が可能で、これによって、パルス運転はもとより、500kW級定常ミリ波パワーの伝送にも対応可能なミリ波パワー分布モニターシステムの構築進めることができるようになった。得られた結果は、国際ワークショップおよび、国内学会で発表を行った。
2: おおむね順調に進展している
モード分析法については、モー ド変換の可能性がある低次の有限個のモードを仮定し、それらの振幅と位相を未知数として、測定されたミリ波強度分布を最適化フィッティングすることにより強度分布を再現し、構成モードの成分を求める方法の高精度化を進めた。その結果、コルゲート導波管入口で仮定した複数のモードとその成分比を、1台~3台までのミリ波パワー分布モニター位置での信号として模擬し、それらの情報から入射モード成分が分析できるか計算アルゴリズムを改良し、逆にモード成分を決定する試験を行った。その結果、モニターの設置位置を、モード間のビート波長の1/4の倍数程度を選択することにより、仮定したモードとその成分比がほぼ、再現できるようになった。これにより、伝送路におけるミリ波パワー分布モニターの設置位置の指針が得られるようになった。結合ミラー系のフィードバック制御については、ミラー角度を2軸で自動調整するために、2軸ゴニオステージとその駆動のための2台のモーター系を2組試作し駆動試験を終えた。ミラー系は真空排気された光学的整合ユニット(MOU)内に設置することを前提として、真空対応としている。将来の高パワー伝送に対応できるように、ペルチェ素子の高性能化を図るべく、市場調査を行い、より小型で熱処理能力の大きいペルチェ素子を選定し一部調達した。これにより、およそ定常運転で500kW、パルス運転では1MW以上のコルゲート導波管伝送系でのモード分析にも使用可能なシステムの構築が可能となる目途が立った。
国際熱核融実験炉 ITER の ECRH 装置等でも対応可能な伝送電力メガワット級定常に対応できるミリ波パワー分布モニターを開発するために、より半導体素子を稠密化した 小形高性能ペルチェ素子を購入し、メガワット級のより高いミリ波定常電力でも温度分布測定のできる高性能ミリ波パワー分布モニターの開発と試験を優先して行う。同時に、遠隔でのミリ波パワー分布データ取得と解析のためのソフトウェアの改良を制御・計測用パソコン及びソフトウェアを用いて進める。結合ミラー系についてはフィードバック制御に対応できるように、その処理の高速化、リアルタイム化を進める。同時に、得られたデータに基づいてMOU内の位相補正鏡をどのように動かすかのフィードバックアルゴリズムを考察し、試験を行ってゆく。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件)
Plasma and Fusion Research
巻: 11 ページ: 2403098-1~4
10.1585/pfr.11.2403098
巻: 11 ページ: 2406085-1~6
10.1585/pfr.11.2406085