研究実績の概要 |
一般化空間座標を用いたオイラー的変分原理に基づき、運動論的プラズマの支配方程式系(Vlasov-Poissn- Ampere system)の導出を行い、空間座標変換に対する作用積分の不変性から、従来の方法によりも直接的に、対称圧力テンソルを含んだ運動量保存則を導いた[H. Sugama, et al., Physics of Plasmas 25, 102506 (2018)]。 GKVコードを用いたLHDプラズマにおけるITG乱流輸送のジャイロ運動論的シミュレーションにより、乱流輸送係数のイオン温度勾配依存性を明らかにした[M. Nunami, et al., Physics of Plasmas 25, 082504 (2018)]。LHD実験において観測される背景イオン温度分布はITGモード不安定性の臨界イオン温度勾配値を若干越えたものとなっていることが確認された。 運動論的電子の効果を取り入れたジャイロ運動論的シミュレーションの解析結果に基づき、ヘリカル系プラズマにおける乱流粒子輸送およびイオン・電子熱輸送のモデリングを行った[S. Toda, et al., Physics of Plasmas 26, 012510 (2019)]。高イオン温度および低イオン温度のLHDプラズマ放電に対する非線形ジャイロ運動論的シミュレーションから得られる乱流輸送フラックスを、少ない計算コストで予測するため、2種類のモデルを構築した。一方のモデルは、不安定性とゾーナルフロー応答の線形ジャイロ運動論解析結果を用いて、イオンと電子の乱流熱拡散係数を与えるものである(ただし、LHDで観測される平坦な密度分布に対して、粒子輸送係数モデルは誤差が大きくなるため、採用しなかった)。他方のモデルは、線形ジャイロ運動論解析結果より予測されたポテンシャル揺動振幅を用いて準線形フラックスを与えるものであり、イオンと電子の乱流熱フラックスとともに乱流粒子フラックスも予測できる。両モデルの妥当性が、ジャイロ運動論的乱流輸送シミュレーション結果との比較により検証された。
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