すべりと接触を考慮したマルチスケール解析の対象として、核融合炉用超伝導マグネットへの適用を目指して研究開発されているいくつかの超伝導導体に注目し、均質化解析・全体解析・局所化解析という一連のマルチスケール解析により核融合炉構造の最適化に関する研究を行い、その有効性を明らかにした。 核融合炉への適用が検討されている超伝導導体には、間接冷却やケーブルインコンジットによる強制冷却方式など複数の候補があり、それぞれに用いる超伝導素線の種類も多岐に渡る。このような場合、数ミリ単位の導体内部構造から数十メートル規模の全体構造を一貫して解析することができ、しかも超伝導導体部の仕様変更にも柔軟に対応できるマルチスケール解析が非常に有用であることを示した。まず、それぞれの構造案に対して均質化解析で等価的な物性値を求め、共通の形状である超伝導マグネットと支持構造物から構成される全体モデルに適用した。このとき、超伝導マグネットの巻線部分に対してコイルと支持構造物間の接触状態をモデル化し、非線形性を示す超伝導マグネットの機械的挙動も明らかした。さらに、全体解析の結果から注目したい部分、特に超伝導コイル内部のひずみ成分を抽出し、それを均質化解析で用いた詳細モデルに与えることで導体内部の超伝導素線や絶縁物の詳細な応力分布を得ることに成功した。得られた応力・変位分布から超伝導導体の違いによる機械的挙動と健全性の評価を行った。さらに、全体解析および局所解析の結果を注意深く観察し、応力集中や冗長な構造を避けるような構造となるように再設計と解析を繰り返して行い、構造の最適化を行った。また、本研究でまとめたモデル化と解析手順により、いくつかの構造パラメータの異なる核融合炉の超伝導マグネットシステムにも適用し、健全性評価が体系的に行えることを示した。
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