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2016 年度 実施状況報告書

重イオンビームプローブの高精度化による二次元電場構造形成と乱流輸送に関する研究

研究課題

研究課題/領域番号 16K06946
研究機関核融合科学研究所

研究代表者

清水 昭博  核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (00390633)

研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワード電位計測 / 揺動計測 / 重イオンビームプローブ
研究実績の概要

本年度は、計画通り大型ヘリカル装置(LHD)の重イオンビームプローブ(HIBP)におけるイオン源の改造を行った。LHD-HIBPのビーム生成はタンデム加速器で行っており、負イオン源を使用している。現状では、LHDのオペレーション磁場1.375T(低磁場)及び2.75T(高磁場)の両方で、HIBPを使用するために、金の負イオンを発生させ、それをタンデム加速器において二段加速し、金の正イオンをプローブビームとして使用している。ここで、二段加速は以下のように行われる。まず、タンデム加速器の正電圧によって負イオンをアース電位から加速した後、ターミナル部(中心部のガスセル領域、加速器の高電圧部)において、中性アルゴンガスとの衝突により金の負イオンを正イオンへ変換する。これを再び加速することによって高エネルギービームを生成している。この過程において、ターミナル部における負イオンから正イオンへの変換効率(割合)は、ビームエネルギーに依存する。金の負イオンから正イオンへの変換効率は、LHDのオペレーション磁場で、10~15%である。これを銀の負イオンを用いることにより変換効率を改善することを目指した。
銀の負イオンを生成するには、負イオンのターゲット板材を金から銀に変更すれば良い。しかしながら、通常、この交換作業はイオン源内の真空状態を破る必要がある。これでは、コンディショニングに時間がかかり、また、実際の実験では実験中に金と銀のイオン源を頻繁に交換することも要求されるため、真空状態を破らずにターゲット金属の金と銀交換を可能にするイオン源の構造を設計、製作した。実際に運転し、ターゲット金属を、真空状態を維持したまま、実際に金から銀に交換可能なことを示し、銀イオンの引出に成功した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

上に述べたように、LHD-HIBPにおけるターゲットスパッタリング負イオン源のターゲット金属板を、真空状態を維持したまま変更可能となるように改良を行った。具体的には、ターゲットの構造を回転式として、ターゲット金属を金、銀、銅と遠隔操作により交換可能となるようにした。試験運転を行い銀の負イオンビームの引出に成功した。磁場1.375Tに相当する加速エネルギーの条件の元で、銀の負イオンビームをタンデム加速器に入射し、負イオンから一価の正イオンへの変換効率を測定した。しかしながら、得られた変換効率は、おおよそ10%となり十分な変換効率が得られなかった。銀負イオンビームは、金負イオンビームや銅負イオンビームと比較して、二価の正イオンビームに変換される割合が多く、一価の正イオンビームにはなりにくい性質があると考えられる。
現在、負イオン源について、新しいフィラメントポートを追加する改造を計画している。現状では、φ1mmのタングステンフィラメントを二本使用しているが、これを三本使用できるように、ポートを一つ追加する。負イオン源内のプラズマ密度を増加させることにより、負イオンビームの出力の増大が期待できる。また、タングステンフィラメントの代わりに、電子放出のより大きなLab6をフィラメントとして使用することも検討している。負イオン源内の更なるプラズマ密度向上及び出力増大が達成可能となる。間もなく設計が完了し、製作に入る予定である。

今後の研究の推進方策

新しいイオン源の設計を更に継続して進め製作する。テストスタンドに取り付け、性能の評価を行う。イオン源内のプラズマ密度を測定し、新しいタングステンフィラメントやLab6フィラメントによる、達成密度の違いを調べる。
銀を用いた時のターゲット電圧やアインツェルレンズ電圧を最適化する。更に、タンデム加速器における、銀の一価イオンへの変換効率については、理論的評価も行い、ガスセル部におけるガス圧や、四重極レンズのパラメータ依存性を評価実験によって行い、変換率改善のための方策を検討する。
試験運転で十分な評価を行った後、新イオン源をHIBPの実機に取り付け、S/N比向上の評価を行う。ドリフト周波数帯(数十kHz)における電位揺動、密度揺動を同時に測定し、位相・相関関係を調べることによって静電揺動駆動の流束を見積もる。GAMの二次元構造と、ドリフト周波数帯における揺動振幅及び揺動駆動の流束を比較することによって、帯状流の電場シアが乱流輸送に与える影響を調べる。GAMと乱流とのエネルギー輸送や散逸に関しては、バイコヒーレンス解析やエンビロープ解析を適用して解析を進める。

次年度使用額が生じた理由

新イオン源の設計を行っているが、まだ完了していないため物品購入がまだ計上されていない。設計作業は順調に進んでおり、完了後物品購入を計画通り進める予定である。また、今後イオン源のテスト運転を開始する予定であり、そのために必要な消耗品等の経費がまだ計上されていない。学会発表については、現状のイオン源を用いて取得したデータについて解析を行い発表した。学会発表に関しては、おおよそ計画通りの経費が計上してある。
イオン源製作、および運転のための必要経費を、今後計上していく予定である。

次年度使用額の使用計画

新イオン源に必要となる物品を購入する。ターゲット板設置用の回転式ターゲット版、回転導入器、遠隔制御回路、イオン源用天板フランジを購入する。また、テストスタンドにおける試験運転用に、フィラメント及びプラズマ発生用電源一式を購入する。また、消耗品として、タングステンフィラメントやLab6フィラメントを随時購入する。イオン源内のプラズマ密度を測定するために、ラングミュアプローブ一式と電源を購入する。また、質量分析に必要となる偏向磁石用の電源も購入を検討している。磁石の冷却システムについては、別の研究で不要となっているチラーシステムを流用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] 2D spatial profile measurements of potential fluctuation with heavy ion beam probe on the Large Helical Device2016

    • 著者名/発表者名
      A. Shimizu, T. Ido, M. Nishiura, S. Kato, K. Ogawa, H. Takahashi, H. Igami, Y. Yoshimura, S. Kubo, T. Shimozuma
    • 雑誌名

      Review of Scientific Instruments

      巻: 87 ページ: 11E731-1-4

    • DOI

      10.1063/1.4963908

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Development of 2D Potential Profile Measurements Using the Heavy Ion Beam Probe on the Large Helical Device2016

    • 著者名/発表者名
      A. Shimizu, T. Ido, M. Nishiura, H. Takahashi, H. Igami, Y. Yoshimura, S. Kubo, T. Shimozuma, S. Kato, M. Yokoyama
    • 雑誌名

      Plasma and Fusion Research

      巻: 11 ページ: 2402123-1-4

    • DOI

      10.1585/pfr.11.2402123

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] LHDにおけるHIBPの密度搖動計測の経路積分効果2016

    • 著者名/発表者名
      清水昭博、井戸毅、中野治久、西浦正樹、加藤眞治
    • 学会等名
      プラズマ核融合学会
    • 発表場所
      東北大学青葉山キャンパス
    • 年月日
      2016-11-29 – 2016-12-02
  • [学会発表] 2D spatial profile measurements of potential and density fluctuation with Heavy Ion Beam Probe on the Large Helical Device2016

    • 著者名/発表者名
      A. Shimizu, T. Ido, M. Nishiura, S. Kato
    • 学会等名
      21st Topical Conference on High-Temperature Plasma Diagnostics
    • 発表場所
      Monona Terrace, Madison, Wisconsin
    • 年月日
      2016-06-05 – 2016-06-09
    • 国際学会

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公開日: 2018-01-16  

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