研究課題
LHDのHIBPは、現状で、ある程度大きな振幅の電位・密度揺動は計測可能であるが、乱流揺動成分に関しては十分なS/N比で電位・密度揺動のデータを得られていない。本研究では、まずHIBPのイオン源を重点的に改良することによってS/N比を改善することを意図している。一昨年度は、ターゲット部を改造したイオン源を用いることにより銀ビームの引出に成功した。しかしながら、金や銅と比べてあまり大きな電流は得られなかった。これは、銀の負イオンは、ある程度の電流が得られたが、タンデム加速器の中心における中性ガスチャンバーにおいて、銀の負イオンから一価の正イオンへの変換効率が予想より小さかったためである。実験では、銀の二価のイオンが多く生成されてしまった。方針を変更し、大元の負イオンにおけるビーム電流を増加させてS/N比を改善することを意図して、フィラメントを2本から3本に増加した完全に新しい負イオン源を、一昨年に設計し、それに基づいて本年度製作した。負イオン源用チャンバー、ヒートシールド、天板となるフランジ等、ほぼすべてのコンポーネントについて製作が完了した。また、フィラメントの製作方法についても改良を施し、これまでよりも太いタングステン線(Φ1mm)で安定的な製作が可能となった。寿命の改善と、チャンバー内のプラズマ密度の増加が期待できる。現在、イオン源テスト用のチャンバーに新負イオン源の組み立て・設置を進めている所である。これらの作業が完了した後、新負イオン源の試験・性能評価を実施する。良好な性能を確認した後、LHDのHIBP実機に取り付けて、揺動計測におけるS/N比の改善に取り組む。
3: やや遅れている
LHDのHIBPについて、当初の負イオン源の改造は実施して、銀の負イオンビームの生成には成功した。しかしながら、タンデム加速器で加速後に生成される銀の一価の正イオンビームは電流量が少なく、揺動計測におけるS/N比の改善には至らなかった。これは、タンデム加速器の中性ガスチャンパ―における銀の負イオンから一価の正イオンへの変換効率が予想よりも小さかったためである。ビームのエネルギーを変更すれば、この変換効率を改善することができる可能性はあるが、LHD実験の磁場条件を1.375Tから大きく変更することは、電子共鳴加熱用ジャイロトロンの周波数の関係から難しいため、現実的な解決策とはならない。このため、方針を変更し大元の負イオンビームの電流を増加するために新しくイオン源を製作した。上に述べたように、現在までに製作がほぼ完了し、次年度からテスト及び性能評価のための実験を実施する予定である。
製作が完了した新しい負イオン源を試験用のチャンバーに設置する。必要な高圧電源を購入して、ビームの引出し実験を実施する。引き出されたビームの成分(ビーム粒子の粒子種と電流比)の分析のため、磁場コイルと電源を準備し、金、銀、銅、それぞれについてビーム電流の評価と負イオン源運転パラメータの最適化を行う。具体的には、フィラメントの本数を2本と3本と変えて比較し、チャンバー内のプラズマの密度をプローブ等で確認しながら、引き出される負イオンビーム電流の最適化を行う。フィラメントとしてはタングステンを用いるが、それとは別にLab6フィラメントを用いることも検討し、生成される負イオンビームの電流量を比較する。試験運転で、充分な調整・最適化を行った後に、新イオン源をLHDのHIBPに取り付けて、電位揺動計測のS/N比改善を試みる。GAM周波数帯(約10kHz)における電位揺動、密度揺動を二次元で同時計測し、また、ドリフト周波数帯(数十kHz)の揺動を計測、比較することによって、層状流の構造と、電場シア及び揺動振幅、乱流揺動駆動による流束の関係を調べる。これにより、層状流、電場シアと乱流輸送についての因果関係を明らかにするための解析を進める。
新負イオン源の製作が完了したが、テストチャンバーにおける組み立てと、試験・性能評価実験がまだ実施されていない。現在、そのために必要な電源等を準備中である。実験の遅れにより、学会発表の旅費の使用について、計画よりも遅れたため、未使用額が生じている。このため、必要となる電源機器及び実験経費を次年度に計上する。
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