研究課題
核融合炉の実現には、いかにエネルギー閉じ込め劣化やプラズマ内の不安定性の発生を回避し、高性能炉心プラズマを生成・維持できるかが要となる。特に、国際トカマク物理活動でも問題となっているのは、多くのトカマク装置で観測されている「電子サイクロトロン加熱時の粒子とエネルギー閉じ込めの劣化」である。これは、アルファ粒子加熱により電子加熱が支配的になるITERや原型炉でのプラズマ輸送・閉じ込め特性の予測と運転領域開発の懸念となっているため、最重要課題として、電子加熱時のプラズマ輸送特性の理解と制御手法の開発が強く求められている。平成29年度は、2月に米国のDIII-D装置の実験に参加し、主に正磁気シアのプラズマにおいて電子加熱を行い、プラズマ閉じ込め性能及び熱輸送特性を評価するためのプラズマ分布データを取得した。全加熱パワーに対する電子加熱の割合を40%から80%まで段階的に変化させた際のデータを取得し、解析した結果、電子加熱割合が増加すると、プラズマ閉じ込めが悪化する傾向が観測された。また、電子加熱割合を固定し、プラズマ密度の変化に伴う閉じ込め特性データを取得した。その結果、主にイオン加熱からなるプラズマの閉じ込め比例則と同様に、密度上昇に伴い閉じ込めが改善する傾向が見られた。実験参加に加えて、これまでに取得したデータの解析を進め、負磁気シアだけでなく、弱磁気シアのプラズマでも電子加熱によるイオン熱輸送の増加が抑制されていることも明らかにした。上記の成果をまとめて、同研究所のScience Meetingにて報告し、DIII-D研究者と今後の研究方針について議論した。その結果、DIII-Dの大規模改修が終わった後の実験キャンペーンに新規実験を提案することで関係者の合意を得た。
2: おおむね順調に進展している
計画通り、粒子輸送係数、イオン熱輸送係数、電子熱輸送係数を評価し、電子加熱時の回転シアの乱流抑制と輸送改善への効果を調べた。また、磁気シアを固定し、プラズマ回転分布(回転シア)や電子サイクロトロン加熱パワースキャンを行いデータを取得した。
実験で得られた乱流揺動スペクトルとプラズマ分布を、局所ジャイロ運動論による計算結果と比較する。
当初より実験参加の為の出張日数と回数が少なかったため。平成30年度は、平成29年度にDIII-D装置の一部の加熱装置の不具合でできなかった実験解析のための旅費に使用する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
Nuclear Fusion
巻: 57 ページ: 085001
10.1088/1741-4326/aa7962
巻: 57 ページ: 116050
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巻: 59 ページ: 044012
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巻: 57 ページ: 126051
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