研究課題/領域番号 |
16K06949
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
岩井 保則 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 六ヶ所核融合研究所 ブランケット研究開発部, グループリーダー(定常) (70354610)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 核融合 / 化学工学 / 触媒・化学プロセス / トリチウム / 火災 / ハロゲン / モレキュラーシーブ / 炭化水素 |
研究実績の概要 |
火災で生じる炭化水素ガス共存下におけるトリチウムの触媒酸化で競合反応となるトリチウム化炭化水素の生成反応とその影響を精査した。精査には疎水化白金触媒を用い、触媒温度は室温近傍から300℃を対象とした。炭化水素ガスは核融合施設で使用される低ハロゲンケーブルが燃焼した際に発生するメタン、エチレン、プロピレン、ベンゼンを対象とした。炭化水素のトリチウム化には水素化反応が大きく寄与していることを明らかとした。炭素の二重結合、三重結合を有するエチレン、プロピレン等は触媒上で水素化によるトリチウム化が顕著に生じ、主反応であるトリチウムの触媒酸化反応率を大幅に低下させることを見出した。水素化によるトリチウム化反応が主反応のトリチウムの触媒酸化を抑制する効果は触媒温度が低いほど顕著となった。逆に炭素の二重結合、三重結合を有しないメタンでは同位体交換によるトリチウム化のみが生じるが、同位体交換によるトリチウム化は速度論的には微小であることを示した。ベンゼンについても水素化は生じず、トリチウム化は有意に生じなかった。トリチウムの触媒のため200℃で一般的に運転する触媒塔ではメタンを除く炭化水素はトリチウム化が生じる前に炭化水素自体が燃焼するため、トリチウム化炭化水素の影響は生じない。対してメタンは燃焼温度が高く、200℃で運転する触媒塔を含むトリチウム除去設備を用いてメタンを含んだトリチウム含有ガスを循環処理した場合、トリチウム化メタンが時間とともに増加するため、メタン燃焼処理を目的とした高温触媒塔を設ける必要がある。メタン燃焼を目的とした場合は白金触媒よりパラジウム触媒が適しているが、ハロゲン含有ケーブルの燃焼により生じるハロゲン化水素ガスによる触媒被毒が進行する。被毒影響の緩和には白金触媒が適しており、白金触媒の平均白金粒子径、細孔径により炭化水素の燃焼率を最適化できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の通りに研究は進捗している。当該年度の課題であったトリチウム酸化の副反応であるトリチウム化炭化水素の生成機構につき、水素化反応が生じる炭化水素が特に顕著な生成速度を示すことを明確とし、同位体交換機構との明確な区分ができた。ハロゲン化水素ガス影響についても明確なデータの取得に成功し、トリチウム除去系のトリチウム触媒酸化塔に充填する触媒の酸化効率を最大化するための最適な作成方法につき、目途を得た。
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今後の研究の推進方策 |
研究実研究実績の概要に記した通り、当初計画の通りに当該年度の課題であったトリチウム酸化の副反応であるトリチウム化炭化水素の生成機構につき解明し、トリチウム除去系のトリチウム触媒酸化塔に充填する触媒の酸化効率を最大化するための最適な作成方法・運転手法につき目途を得た。今年度は最終年度として、技術検証の必須事項であるトリチウム除去システムのモジュールとして所定の性能が得られることを示す。前年度までの所定の成果を踏まえた、実際に開発した触媒を充填した触媒塔とゼオライトを充填した吸着塔を備えた小規模トリチウム除去系モジュールを作成して、火災を模擬した場合のトリチウム除去性能維持の確証を行う。試験では火災想定条件にて炭化水素等の被毒の影響がないこと、モジュールで求められる99%以上のトリチウム回収が全火災条件にて維持できることを示す。併せて反応熱による温度の上昇挙動や大量トリチウム処理時の透過量等を総合的に評価することを計画している。
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