研究課題/領域番号 |
16K06950
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡辺 直子 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (20624711)
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研究分担者 |
小崎 完 北海道大学, 工学研究院, 教授 (60234746)
田中 真悟 北海道大学, 工学研究院, 助教 (90749037)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 廃止措置 / コンクリート廃棄物 / 放射性廃棄物 / クリアランス / コスト |
研究実績の概要 |
原子力発電所の廃止措置において、大量のセメント材料が放射性廃棄物として生じることから、これらを安全かつ合理的に処理・処分することが重要となる。本研究では、原子力発電所の廃止措置により発生するコンクリート廃棄物を対象とし、廃止措置・廃棄物処分・クリアランス対象物の再利用に係るシナリオを評価するためのツールを開発することを目的とする。 平成28年度には、廃棄物特性評価に関する基礎実験として、セメント試料中の放射性核種の拡散実験に着手した。水/セメント比0.36及び0.60の2種類のセメント試料を調製し、異なる温度で養生を開始した。それらの試料に対し、Na-22の見かけの拡散係数、拡散の活性化エネルギー、及びセメント試料の水和率、全空隙率、毛細管空隙率を求め、空隙構造と主な拡散メカニズムについての検討を行った。 さらに、生態遮蔽解体にかかる費用及び廃棄物量の算出のため、原子炉の運転によるコンクリート構造物の放射化の計算及びその結果を用いた廃棄物量の算出に着手した。放射化計算によって得られる放射能濃度分布をもとに、異なる安全貯蔵期間後の放射性廃棄物区分ごとの廃棄物量及び解体作業人件費を算出する手法を確率した。今後は、廃棄物特性評価に関する基礎実験をもとに特性評価に必要な現象理解を進め、それらの結果を用いて廃棄物量、処分・再利用費用の評価を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セメント中の核種の移行挙動に関する基礎実験に関しては、セメント試料の調製、複数の核種の見かけの拡散係数及び拡散の活性化エネルギーの取得ともに概ね、順調に進んでいる。また、放射化計算に基づくコンクリート廃棄物量の算出方法については、計算手法の流れを確立した。今後は、鉄筋、骨材などの組成、放射化反応率などのバリエーションや解体工法の選択肢を組み込んでいく。 計画事項として挙げていた点全てについて着手し、次のステップが見える段階までの成果を出しており、おおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、セメント試料中の拡散実験及び熱変質セメントの微細構造観察を継続し、核種ごとに支配的な拡散経路を推定し、水/セメント比、変質程度などを影響因子とした拡散モデルの構築を図る。また、モデルをもとに、コンクリート材料内部への放射性核種の浸透現象について検討する。また、生態遮蔽解体にかかる費用及び廃棄物量の算出に関しては、異なる工法、作業方法、廃棄物分別の厳密さ、再利用量、再利用のための中間処理の程度や切断後の廃棄物を収容する容器の大きさなどの影響因子をパラメータとして算出できるような計算シートを作成する。さらに、原子炉建屋、タービン建屋、廃棄物保管庫など放射性物質による汚染の懸念がある部分の除染に係る費用及び区分ごとの廃棄物量を算出する計算シートの作成に着手する、その際、核種移行実験結果で得られるモデルをを用いて除去深さを設定する。 平成30年度には、廃棄物区分を保守的に行い作業時間をできるだけ短くするケースから、細かく分別して処理単価の高い区分の廃棄物量を可能な限り減らすケースまで、幾通りかのシナリオを想定して、それぞれについて人件費、廃棄物量を算出する。処分・再利用の費用評価の際、不確定な要素については、海外の事例などを参考にしてパラメータとして設定する。また、パラメータの感度解析を行い、廃止措置を推進する上での課題を優先順位を付けて抽出し、総合的な評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
先行実験で調製した試料を利用して実験を行ったため、消耗品費が発生しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入及び研究補助人件費にて使用予定。
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